はじめに
こんにちは,中村研究室M1の大石琉翔です.
新しい年度の幕開けを迎え,皆様におかれましては,新たな一歩を踏み出されていることと存じます.
さて,2024年3月17〜19日に開催された,第71回エンタテインメントコンピューティング研究会で「エキセントリックトレーニングにおける動作速度の安定性向上のための効果音フィードバック」というタイトルで発表しましたので,そちらについて報告させていただきます.
研究概要
エキセントリックトレーニング
筋トレの種類のひとつに,効率的に筋力を向上させることや筋肥大を促進することができるエキセントリックトレーニングというトレーニング方法があります.エキセントリックトレーニングとは,筋肉が収縮した状態から筋肉を伸長させて力を発揮するエキセントリック収縮を主として行うトレーニングです.ダンベルを持ち上げたり,下ろしたりして行う「ダンベルカール」というトレーニングで例を示すのですが,多くの人は,「ダンベルカール」と聞くと重いものを持ち上げる印象を思い浮かべると思います.しかし,エキセントリックトレーニングは,重いもの持ち上げるというものではなく,重いものをゆるやかに下ろすという動作に焦点を当てたトレーニングになります.
問題
エキセントリックトレーニングの効果を最大化するには,ゆるやかに下ろす動作を3~5秒かけて行う必要があります.しかし,筋肉への負荷が高い動作であるため,回数を重ねるごとに動作が速くなってしまい,トレーニング効果を減少してしまうという問題が生じます.
提案手法
この問題を解決するために,トレーニング動作に連動して「ゆるやかな動作を促すような音」を鳴らし,トレーニングの動作速度をフィードバックする手法を提案しました.この手法により,意識的な努力により動作速度を改善するのではなく,音に合わせるような感覚で動作することで自然と動作速度をゆるやかにすることが期待されます.
「ゆるやかな動作を促すような音」として,チャージ音というエネルギーが貯まるような音を選定しました.実際のトレーニングでは腕を上げる動作を速く,腕を下ろす動作をゆるやかに行うので,腕を上げる動作がエネルギーを解放するイメージ,腕を下ろす動作がエネルギーを貯めるイメージになります.これらの観点からトレーニング動作に適した音であるチャージ音を選びました.
システム
実際のシステムはApple Watchから動作速度を推定し動作速度が適切だったら「チャージ音」が鳴り,動作速度が不適切だったら「パワーが抜ける音(プシュー)」鳴るようになっています.以下の動画が実際のフィードバックシステムの動作になります.(容量が大きくてごめんなさい)
動作が適切な場合
動作が適切でない場合
実験・結果
提案手法の有効性を検証するために実験を行いました.
仮説としては,「提案手法を用いてトレーニングを行うことでトレーニング動作をゆるやかにすることができる」になります.
提案手法であるチャージ音提示条件,比較手法である秒数読み上げ提示条件,音提示なし条件の3つで実験者内比較を行い,実験参加者には各条件1セット10回を3セット分のトレーニングを行ってもらいました.
3 セット目の平均の角速度の可視化のグラフ
上の図が3セット目のトレーニング動作1回の角速度を平均したグラフになります.横軸がフレーム数で,1回の動作を10分割した平均を表しているので,フレームが0に近い方が腕の下ろし始め,10に近い方が腕の下ろし終わりを表しています.縦軸は角速度になっており,値が小さいほど動作が速いことがわかります.このグラフから黄色のチャージ音提示条件が6~8フレームあたり(動作中盤)で最も角速度が大きく,動作速度をゆるやかにできていることがわかりました.
結論として,チャージ音を提示することによって負荷が高まった際でもゆるやかに動作し,トレーニングの効果を高められることが明らかになりました.
今後は,チャージ音以外にどのような効果音が効果的かを検討したいと思っています.
発表スライド
論文情報
感想
人生2回目の学会発表で京都に行ってきました.
学会では様々な方々からいただいた貴重な意見は,とてもいい経験となりました.この経験は自信にもつながり,今後の研究活動に活かしていきたいと思います.
京都では初めての抹茶体験や和菓子作りを体験しました.和菓子作りでは,不器用すぎてあまり綺麗にできませんでしたが,味は美味しかったです!