はじめに
こんにちは。中村研究室M1の髙久拓海です。
まだまだ暑い日が続きますがみなさまいかがお過ごしてでしょうか?
さて、2023年8月8日・9日に開催された第200回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「ドライビングシミュレータにおけるカーブ走行時のカーブ半径と道路幅が運転に及ぼす影響のモデル化」というタイトルで発表しましたので、そちらについて報告させていただきます。
研究内容
背景
いきなりなのですが、みなさんは運転が得意でしょうか? 私は運転が物凄く苦手で、なるべく運転しやすい道をいつも探しています。
運転技量はドライバ毎にことなるため、ドライバの技量に合わせた経路を推薦することが事故の予防や安全な運転につながります。しかし、現在の経路推薦システムではドライバの技量や心情は考慮されていません。これらの要因を考慮した経路推薦のためには、基礎調査として道路条件ごとの運転難易度を、定量化した値で表すモデル化を行う必要があります。
私たちはこれまで、様々な道路条件における運転難易度のモデル化を行ってきました。その中の1つに、HCI195で発表させていただいたカーブ走行時のカーブ半径と道路幅に着目した運転難易度のモデル化を行ってきました(詳細はこちらの記事をご覧ください)。
しかし、この時の研究では、
- 実験に参加してもらった人数が少なかった
- 道路条件の運転難易度を推定する数式モデルを導出できていなかった。
という問題点がありました。
そこで、今回の研究の目的は「カーブ走行時のカーブ半径と道路幅が運転に及ぼす影響について再度実験を行い、そのモデル化を行うこと」になります。
実験
実験は過去の時と同様に、HMD上で動く実装したシステムとドライビングシミュレータを用いて行いました。また、実験の様子の一部の動画が下記のものになります。詳しい条件については、今回の論文と過去の論文をご覧ください。
結果
カーブ半径と道路幅が及ぼす影響
まず初めに、カーブ半径についての結果を下に示します。
このことから、
- カーブ半径が大きくなるほど運転速度が速くなる
- カーブ半径が大きくなるほどカーブ区間の通過時間が短くなる
といった結果が得られました。
また、道路幅についても同様に結果を見ると
- 道路幅が大きくなるほど運転速度が速くなる
- 道路幅が大きくなるほどカーブ区間の通過時間が短くなる
といった結果が得られました。
これらの結果から
- カーブ半径および道路幅が小さいと、運転の難易度が高い
- カーブ半径および道路幅が大きいと、運転の難易度が低い
- カーブ半径と道路幅のどちらも運転難易度に影響を及ぼす
ということがわかりました。
運転難易度のモデル化
ここでは、カーブ半径と道路幅が運転に及ぼす影響を数式で表すモデル化の結果について説明します。なお、運転の特性というのは人によって異なるため、今回は運転速度が速い、普通、遅いの3つのグループについて運転速度(V)と通過時間(MT)の数式を導出した結果を紹介します。(数式の変数はそれぞれ、R = カーブ半径、W = 道路幅、A = カーブ区間の全長、を表しています)
速い:
- V=73.10+2.311W-1266(1/R)
- MT=22.5+4.14A/(-23.1+0.115W-262(1/R)+18.0W(1/R))
普通:
- V=57.11+2.059W-982.4(1/R)
- MT=24.3+4.23A/(-23.4+0.216W-282(1/R)+15.6W(1/R))
遅い:
- V=43.76+2.025W-672.9(1/R)
- MT=22.5+1.46A/(-13.9+0.296W-360(1/R)+27.5W(1/R))
これらの数式を用いることで、実験を行っていない条件での走行速度や通過時間を導出することが可能になります。
より詳細な内容についてはスライドや論文をご覧ください。
発表スライド
論文情報
感想
今回は学会発表だけではなく、前日に北海道情報大学の湯村研究室と伊藤研究室との合同研究会にも参加しました。研究について非常に有意義な意見をたくさん頂けたため、今後の研究に活かしていきたいです。
また、学会の初日の夜に、学会が終わってすぐに会場を飛び出し、北広島市にあるエスコンフィールド北海道に行ってきました。野球観戦の概念が変わるほどスタジアムが楽しすぎて本当に感激でした!!
最後にはなりますが、研究について何度もアドバイスをいただいたヤフーの山中さんに、この場を借りて感謝を申し上げます。また、論文執筆や発表練習にお付き合いいただいた中村先生、研究室のメンバーにも心より感謝を申し上げます。ありがとうございました!!
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