はじめに
こんにちは。中村研究室B3の山﨑、小松研究室B3の澤です。2020/9/7-8にオンラインで行われたHCIでワコムさんとの共同研究の成果、加えて昨年伊藤、濱野らが発表した「手書きとフォントの記憶形状の違いによる記憶効果の比較」の先行研究として発表してきましたので、ご報告させていただきます。
今回、学部2年から研究していた「文字の見た目が記憶に及ぼす影響」というタイトルで発表させていただきました。
研究内容
私たちは普段の学習において基本的に何を活用しているでしょうか?
一般的には教科書を読んで覚えたり、ノート、コンピューター上のテキストファイルに重要なところをメモするなどして、公式や単語を記憶していると思います。その時に目にする文字は使う媒体によって種類が異なります。本研究では自身のノートに書く手書き文字に着目しました。先行研究では、フォント2種類(MS明朝、MSゴシック)、女性の手書き文字2種類を使用しましたが、手書きが女性のみというのは問題あるかもと考え、本研究ではこの4種類と男性の手書き文字2種類の計6種類で比較を行いました。
そこで私たちは、先行研究と同様、架空の物事の名称と特徴を記憶していただく実験を行い、6種類で覚えやすさに差が生じるのか検証しました。以下の図は使用した6種類の文字です。この図では、架空のパンの名前と特徴が書かれています。
実験では、このパンだけでなく、他に2つのパンについて覚えてもらっています。
どの文字タイプが覚えやすいでしょうか?
この記憶実験を38人(男性23人、女性15人)に6テーマ分行っていただきました。
実験の結果、手書きBのスコア平均が最も高く、手書きCが最も低いという結果になりました。しかし有意差は認められなかったため、テーマごとの分析を行い、極端なデータとなってしまったテーマを除外して分析を行いました。そのスコア平均のグラフが以下の図となります。こちらでも手書きBのスコアが最も高く、手書きCが最も低いことに変わりはありませんでした。
ここで手書きBですが、アンケートで読みにくいと回答した人が多いという結果が得られました。これは先行研究と同様の結果です。また、先行研究では、MSゴシックが記憶に残りにくいという結果が出ていましたが、本研究ではMS明朝よりもMSゴシックの方が記憶に残りやすいという結果になりました。これは読みにくいと回答した人がMSゴシックの方が多かったためではないかと、本研究では考察します。
また、本研究で実験をする際の記憶タスク設計で課題が見つかりました。日常生活で関わりのあるテーマやテストのカテゴリはスコアや正解率が高く、逆に関わりの少ないものはスコアや正解率が低くなる傾向が見られました。このことから、日常生活の有無を考えること、加えてテストのカテゴリで難易度を均一にするといった対応が必要になると考えます。
今後は、実験参加者の男女の人数を揃えて実験を行いたいと考えております。またその際には記憶タスク設計を考慮しなければいけません。これまでの研究等を考慮し、記憶に適切な字形を見つけることで、ユーザーの手書き文字または入力した文字を記憶に残りやすい文字に変換するといったノートの作成を実現したいと考えています。
参照
論文および発表スライドは以下から参照できますので、よろしければご覧ください。
感想
初めての研究、学会発表で、実験計画や参加者集めデータの分析などわからないことが多く、不安でしたが先生や先輩方のサポートのおかげで無事発表できました。
ご指導いただいた伊藤先輩や濱野先輩をはじめとする先輩方、中村先生にこの場お借りして感謝いたします。ありがとうございました!
本来であれば、函館という場所で美味しいものをたくさん食べ、会場でたくさんの方とお話ができたかもしれませんが、新型コロナウイルスの影響で研究室でしんみりと発表しました。新型コロナウイルスが収束して、たくさんの人が集まり、会場で発表できる日が早く来ることを願っています。
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