SIGHCI185で「親指の長さがスマートフォンの操作に及ぼす影響の調査と親指の長さの自動推定手法の検討」というタイトルで発表しました(梶田美帆)

投稿者: | 2019年12月31日

はじめに

こんにちは,B3の梶田美帆です.先日淡路島で開催されたHCI185にて発表させていただきましたので,ご報告させていただきます.

研究概要

現在人々の生活に欠かせない存在となっているスマートフォン.そしてその機能を支えるアプリケーションですが,どこか性能とは別の使いづらさを感じたことはありませんか?

世の中には様々なアプリケーションが存在し,その中には当然類似した機能を持つものも少なくありません.ここで,アプリケーション提供者や開発者にとってユーザ獲得やその維持は大きな問題で,アプリケーションの利用自体を「面倒」「手間」とユーザに感じさせてしまうことは避けなければなりません.

しかし開発者にとって,自身の制作物に対して,いちユーザとしての目線で完全にフラットな評価をすることは困難です.また,使いにくさを評価するためにはユーザ実験などが必要となり『手間』です.一方,同じユーザであっても,個人によって使いにくさの基準は異なるので,そのユーザに合わせたユーザインタフェースが重要になります.

毎回アプリケーションを利用しているユーザに「使いやすいですか?」「使いにくいですか?」などと聞くわけにはいきませんので,アプリケーションをより良いものにするためには,アプリケーションを操作している最中に『自動で』『個人の使いにくさ』を推定することが必要であるといえます.

我々は過去に,ユーザがUIに対して感じている使いにくさを,ユーザがまさに操作している最中に自動で推定する手法について検討しました.しかしこれは『個人の使いにくさ』を考慮していませんでした.では,『個人の使いにくさ』に影響する要素,すなわち『使いにくさに影響する個人の特徴』とは何かを考え,我々は指の長さに注目しました.実際に,ユーザの指の長さがスマートフォン上のUIの操作性にかかわることを示す研究が多く存在しています.

そこで今回我々は,「片手把持における操作に用いる親指の長さを,ユーザ操作時のふるまいから自動推定する手法」について検討しました.

具体的には,指の長さが短い人10名,中くらいの人9名,長い人9名の合計28名の実験協力者がUIを操作している最中のデータを収集し,それぞれの傾向を分析,それをもとに,ランダムに取り出した操作時のデータを指の長さが短い,中くらい,長い,どのグループの人のものであるか推定するための手法を検討しました.

ここで,データセット構築にはモグラたたきタスクを利用しました.これは,画面上の万遍ない位置での操作およびセンサ情報を取得するものです.なおこちらは過去の研究でも用いたものとなっています.

我々は,指の長さごとに操作しやすい距離間隔,ターゲット距離が存在すると仮説を立てました.そこで,ターゲット距離と操作時間の関係を指の長さごとに比較したところ,指の長さ,すなわち指が短い,中くらい,長いグループのいずれであるかによって以下のような特徴が見うけられました.

しかし,この結果は個人のデータをグループで平均化したため得られたものです.そのため,グループの特徴が同グループの個人においても特徴的であるとは限りません.

そこで,同様にして個人ごとのターゲット距離と操作時間の関係を調査しました.ここでは,下記のような基準で判定を行いました.

たところ,指が短い人の10人中7人,中くらいの人の9人中9人,長い人の9人中9人が,グループ内において同一の特徴を持つことがわかりました.

このことから,指の長さはターゲット距離と操作時間の関係において影響を与えるといえます.

つまり,特徴操作時間などの特徴分析によるパターンマッチングによって,指の長さが推定できることがわかりました.しかし,本研究のデータは各実験協力者から840回の操作をそれぞれ収集したものです.そのため今後は,同様の傾向が少ない操作回数のデータにも表れるか調査していきたいと考えております.

 

参照

発表に使用したスライドはこちらです.

分析の詳細などにつきましては論文をぜひご一読ください.

梶田 美帆, 阿部 和樹, 中村 聡史, 山中 祥太. 親指の長さがスマートフォンの操作に及ぼす影響の調査と親指の長さの自動推定手法の検討, 情報処理学会 研究会報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2019-HCI-185, Issue.20, pp.1-8, 2019.

 

また,こちらの研究は記事中でも言及いたしました通り,過去の研究の続きとなります.こちらもご一読いただけますと幸いです.

梶田 美帆, 杉本 知佳, 阿部 和樹, 中村 聡史, 山中 祥太. スマートフォンのセンサ情報によるUI評価手法の検討, 電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), HCS-10, Vol.119, No.38, pp.51-56, 2019.

感想

二度目の学会発表になりますが,はじめて一人での研究および登壇に大変緊張しました.なんとか発表までを終えることができたのは,サポートくださった阿部先輩,中村先生,および研究室のみなさまのおかげです.本当にありがとうございました.

こちらは発表当日の昼にいただいた,ラスティンくんパンです.パン生地は結構しっかりめで,中身に確かクリームか何かが入っていておいしかったです.ラスティンくんは宿泊したホテルのキャラクターで,たまねぎをモチーフにしているところが大変かわいらしいと思います.身長がたまねぎ6個,体重はたまねぎ3個分ですが,夢は日本一周のようです.どうぞよろしくお願いします.

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