SIGHCI169で「手書き文字に対する書き手識別と好感度に関する調査」という研究発表を行いました(斉藤絢基)

投稿者: | 2016年9月26日

残暑厳しい季節になり、北海道へ帰省した中村研究室B3の斉藤絢基です。

8月29~30日に、山口県下関市の源平壮にて開催された、情報処理学会ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(SIGHCI169)にて研究発表をしてきたのでご報告させていただきます。

発表内容

私はひとの手書き文字にとても興味があります。日本では手書きで文字を書く練習を小学生の頃に徹底的にさせられますが、同じように練習しているのにもかかわらず手書き文字というのは書き手によって形状が異なるものであり、個性がかなり現れる面白いものだと考えています。

今回の研究では、ひとの手書き文字はどういうものなのか、そしてひとは自身の手書き文字をひとはどのようにとらえているのかを明らかにするため、下記の大きな2つの仮説を立てました。

  1. 人は自身の手書き文字を識別することができる
    1-1. 対象文字列が自身の名前のとき、識別能力が上がる
    1-2. 文字のきれいな人ほど識別能力が高い
    1-3. 他者の文字と融合しても、自身の文字として識別できる
  2. 人は自身の手書き文字に対して好感をもつ

また、これらの仮説を検証するために大学生14名に協力してもらって実験を行い、以下のことが明らかになりました。

  • 人は自身の手書き文字を他者の手書き文字と識別することができる。
  • 提示される文字列が自身の名前のとき、自身の手書き文字かどうかという識別能力が上がる。
  • 長年文字を意識して書いてきた人(書道経験者など)ほど自身の手書き文字に対する識別能力が高い。
  • 他者の文字と融合すると単体文字よりも識別能力が下がるが、自身の文字として識別することができる。
  • 自身の手書き文字に対して好感をもつ。また他者と融合すると好感度は高まる。

以上の結果を踏まえて、我々はこうしたひとの手書きの特性を、手書きフォントに応用できるのではないかと考えました。

例えばメールに対して、PCのフォントの代わりに送り手と受け手の手書き文字を融合することで、自身の個性を反映&自身の文字として識別可能&その文字に対する好感度が高い文字を生成することができるといったことを想定しています。例えば、下の図は自身とある人の手書き文字を融合したものですが、私にとっては自身の文字と識別できるけれど、やたらと好感度が高くなるものとなっています。stroke_fusion

こうした応用は、ひととひとを繋げることにつながるのではと考えています。

発表に用いたスライドがこちらになります。詳しくはこちらをどうぞ。

また、論文は下記よりアクセス可能ですので、興味のある方はこちらからアクセスいただければと思います。

[論文情報]
斉藤絢基,新納真次郎,中村聡史,鈴木正明,小松孝徳:手書き文字に対する書き手識別と好感度に関する調査,情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI),2016-HCI-169,1-8(2016-08-22),2188-8760

 

感想

初めての学会発表&アガリ症でかなり緊張してしまい、自分の伝えたかったことを100%伝えることができず、練習不足を痛感しました。しかし、多くの方々が我々の研究に興味をもち、コメントを残してくださったので素直にうれしかったです。

私にとってこの2日間は学ぶことがとても多く、貴重な時間となりました。この経験を今後の研究に活かし、質の高い研究・プレゼンをしていきたいです。

最後になりましたが、実験や発表練習に付き合っていただいた中村先生、先輩方、B3のみなさんにこの場をお借りして御礼申し上げます。今後ともよろしくお願いします。

発表の様子

発表の様子