こんにちは、中村研究室M1の斉藤絢基です。2019年となってしまいましたが、2018年6月5〜8日鹿児島市で開催されていた2018年度人工知能学会全国大会(JSAI2018)にて「Fontender: コミック創作のためのフォント融合による文字デザイン手法」というタイトルで研究発表してきたので、そちらの報告をさせていただきます。
研究内容
背景
コミックにおいて、登場人物のセリフやナレーションなどで用いられている文字を適切なデザインに仕上げることで、読者に物語の雰囲気やキャラクタの心理描写などを効果的に伝えることができます。下図のように、同じセリフでもガクガクしたフォントを使用することで恐怖感を増長させたり、ポップ体を使用することでかわいらしい印象を与えることができます。
場面の雰囲気やキャラクタの性格・感情に合わせた文字デザインを行うとき、制作ソフトに収録されているフォントからその場その場に合ったフォントを探し出す必要があります。つまり、コミック創作者には文字デザインに関する深い知識が求められます。また、日本語のフォントはその文字数の多さから、英語のフォントに比べ、バリエーションが少ないため、その場にあったフォントに該当するものがないケースも多くあると考えられます。
提案手法
我々は、任意の既存のフォントを組み合わせて新たなフォントを作り出せるようにすることで、その場その場にあった文字デザインを施すことができる手法を提案しました。具体的には、ユーザが入力した2つの印象語を軸とした2次元平面上に既存のフォントを配置し、ユーザの選択した平面上の位置に応じて複数のフォントをブレンドして新たなフォントを生成しています。これにより、ユーザに文字デザインに関する知識がなくとも、コンテンツに適したフォントを得ることができると考えています。
より詳細な手法の実現方法を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
適用例
上記の手法を用いて、実際にあるコミックの1コマに対して文字デザインを行った例が下図になります。どちらも印象語の選択で「好き」「暖かい」を選択しているのですが、左図は「好き」「暖かい」度合いが共に低くなるように、右図は「好き」「暖かい」度合いが共に高くなるように、それぞれ文字デザインを施したものです。左図よりも右図のデザインの方が、丸みを帯び女性らしさを感じさせる形状となっていることがわかります。
今後の展望・応用例
コミック創作において、セリフやナレーションを対象としたフォント選定による文字デザインの他に、擬音語や擬態語を表現する描き文字のデザインも求められます。我々のフォント生成手法は、フォントを文字として捉え数式を用いて表現しているため、手書き文字との融合を行うことができます。そこで、自身の手書き文字に本手法で作成したフォントを融合することによる、描き文字のデザイン支援も行えるのではないかと考えています。
発表原稿
斉藤絢基, 中村聡史. Fontender: コミック創作のためのフォント融合による文字デザイン手法. 第32回人工知能学会全国大会(JSAI2018), 2018.
感想
プログラムの都合上、同セッション内に自動運転や地中レーダーといったコミック工学とかけ離れた研究分野の方々がいらっしゃる中の発表でしたが、プロトタイプシステムに対して強い興味を持っていただき、違った角度からの意見をいただくことができました。
今回の学会開催地は鹿児島ということで、会場には大量の白くまが設置されていました。
また、帰りの飛行機の直前に750mlの特大サイズで白くま対決をしました。私は頭がキンキンしてしまい、諸先輩方に勝つことはできませんでした。ユーコン川で1週間キャンプをしながら川下りをしてリベンジしたいと思います。