HIS2018で「手書き文字練習における指・ペン間での書写技能向上性に関する調査」というタイトルで発表してきました!(菅野一平)

      2023/01/05

はじめに

こんにちは!中村研究室B3の菅野一平です!

2018年9月5日〜7日に茨城県の筑波大学で開催された、HISシンポジウム2018にて「手書き文字練習における指・ペン間での書写技能向上性に関する調査」というタイトルで発表を行ってきたので、そちらの参加報告をさせていただきたいと思います。

発表内容

最近ではそのようなスマートフォン向けの手書き文字練習アプリケーションが多数存在しており、手軽にスマートフォンで文字練習ができるようになっています。ここで、スタイラスペンなどによる練習であれば、普段の紙とペンとの関係性をあまり変わらないため問題なさそうですが、スタイラスペンは邪魔ですし、また子どもなどに自分のスマートフォンで練習させたいときなどには、なかなか難しいものです。ここで、指で練習できれば色々なハードルが下がり、子どもでも手軽に練習できるようになると期待されます。

ただここで問題なのは、指で練習したときにペンと同等の効果があるのかということでした。

本研究では、こういった指での文字練習がペンでの書字技能をどれだけ向上させるのかということを明らかにした研究です。

これまでの研究で、私たちは利き手、非利き手の平均文字は類似するのか調査を行い、同じユーザ同士の平均文字は似通うことを明らかにしてきました。このことから、文字を書くという行為において腕や手などの出力部分よりも脳内のイメージの部分が重要なのではないかと考えました。

そこで我々は文字練習においても同じようなことがいえると考え、指での練習とペンでの練習にあまり違いはないのではないかという仮説を立て、実験を行いました。

今回,我々は

1. ユーザの文字がどれだけお手本の文字に近づいたか(上達度)
2. ユーザの文字のブレがどれだけ減少したか(安定度)

という評価軸で検証しました。

実験の概要としては、期間中ユーザに文字練習を指定された方法で練習してもらい、練習前と練習後に行ったテストの文字を比較を行いました。

実験をする際、今回は「指+なぞり」「指+mojivator」「ペン+なぞり」「ペン+mojivator」の4グループで比較しました。mojivatorはこれまでに我々が提案してきた文字練習システムで、リアルタイムにお手本の文字とユーザの書いた文字を融合することでモチベーションを保ちながら練習ができるというものです。

また初学者を対象とするため、日本人が書き慣れていない文字として日本語の平仮名に比べ複雑で、日本語にはないストロークを含んだ梵字という文字を練習用の文字として選出しました。

結果は下図の通りとなりました。下図の上段の2つのグラフは各グループの上達度の平均で、下段の2つのグラフは安定度の平均を表したグラフです。この結果から、上達度、安定度において指での文字練習はペンを用いた文字練習と同等の効果が得られることがわかりました。

 

この検証結果により、指による文字練習は、ペンでの文字練習と同等のレベルであり、十分有用であることが明らかになりました。これにより、これまでは文字を練習する際にペンを用いて練習するのが一般的でしたが、スマートフォンの文字練習アプリケーションを指を用いて練習するのも有効である可能性が示唆されたため、指でより手軽に楽しく文字練習ができる可能性があるのではと期待してます。また今回の実験結果より、文字練習において「ペンで練習する」ということよりも指でもなんでもいいので文字の形を覚え、文字のイメージを作ることのほうが重要なのではと考えています。

ただ、漢字の点などのように短いストロークでは、指の引っ掛かり(ペンに比べて指だとたわみ、摩擦も大きくなるため)が悪さをして、大きく動かし過ぎるなどの傾向がありました。こうした点については今後さらに検証を行っていきたいと思っています。

 

発表スライド

発表で用いたスライドになります。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。

論文情報

論文がまだ公開されてないため、ご連絡いただければメールにてお送りさせていただきます。

菅野 一平,新納 真次郎, 久保田 夏美, 中村 聡史, 鈴木 正明: 手書き文字練習における指・ペン間での書写技能向上性に関する調査, ヒューマンインタフェースシンポジウム2018, 7D2-1, pp.511-517.

感想

初めて論文や研究活動に携わらせていただきました。最初は学会発表までうまく出来るか自信がありませんでしたが、中村研究室の先輩方や中村先生の手厚いフォローのおかげで、無事発表を終えることができました。発表はかなり落ち着いてできたので、今後も発表の機会があれば練習をしっかりと詰んで望みたいです。今回、実験設計の議論が不十分で改善点が見つかったので、今後の課題として取り組んでいきます。

今回の研究活動では、学ぶことが多く、とても貴重な経験をさせていただきました。この経験を今後の研究活動に活かしていきたいと思います。

最後になりますが、お忙しい中、原稿チェックや発表練習などに付き合っていただいた中村先生や新納さんをはじめとする中村研究室の先輩方にはこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

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