はじめに
お久しぶりです.中村研究室新M2の渡邉健斗です.
2025年3月17〜19日に京都で開催された第75回EC研究会にて「上を向いてタップしよう: 首の角度のリアルタイム推定を用いた姿勢矯正を誘導するゲームの実現」というタイトルで発表してきましたので,そのご報告をさせていただきます.こちらの研究はHCI206で発表させていただいたものの続きとなっていますので,ぜひ合わせてご覧ください.
研究概要
いきなりですがみなさん,普段どのような姿勢でスマートフォンを使っているでしょうか?
もしかしたら,下の図のようにスマートフォンを首より下に置き,上から覗き込むような姿勢で操作してしまう人も多いのではないかと思います.

頭部前方位姿勢
このような姿勢は,身体に対して頭部が前に突き出た「頭部前方位姿勢」と呼ばれていて,長時間続けることでスマホ首やストレートネックになってしまうといわれています.
また,そもそも首は傾ければ傾けるほど首に負荷がかかるとされていて,下の図のように例えば45度首を傾けると,22kgもの負荷が首にかかっていることになります.

首への負担(Hansraj, K. K.: Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head, Surg Technol Int, Vol. 25, No. 25, pp. 277–9 (2014).)
我々はこのような問題を解決するため,スマートフォンのみを用いて首の角度を推定する手法を提案し,一定の精度で推定可能であることを明らかにしてきました.
そこで,この首の角度推定手法を用いてユーザの姿勢をリアルタイムに推定し,姿勢が悪い場合にはネガティブなフィードバック,姿勢がいい場合にはポジティブなフィードバックをするシステムにより,ユーザの姿勢矯正への意識を支援することを目指します.
シリアスゲームでの実装
今回はそのような仕組みのひとつの応用例として,シリアスゲームに着目しました.シリアスゲームとは,娯楽のみでなく教育や医療,ビジネスなど社会的な目的を持ち合わせたゲームで,ヘルスケアやフィットネスの分野でもその有効性が確認されています.
そこで,姿勢が悪いとプレイしにくく,姿勢が良いとプレイしやすくなるようにゲームを設計し,プレイのしやすさが変わらないものと姿勢矯正への意識やゲームの楽しさなどについて比較実験を行いました.
また,システムによって推定された首の角度も比較したかったため,姿勢によってゲームのプレイしやすさが変化するもの(顔+姿勢認識FB条件)としないもの(顔認識FB条件)の両方で,顔認識失敗時など姿勢が推定できなかった場合はゲームを続けられないようにしました.
今回は,ランダムに配置された数字を順番に押していく数字早押しゲームにおけるボタンの背景色とテキスト色のコントラストを制御することで,ゲームのプレイしやすさを変化させました.
結果・考察
顔認識FB条件と顔+姿勢認識FB条件を交互にプレイしてもらう実験を行い,それぞれをペアとして対応のあるt検定を行ったところ,姿勢への意識については姿勢の良さに連動したFBがある方が有意に意識が高まることが明らかになった一方,ゲームの楽しさについては影響を及ぼさないことが明らかとなりました.
また,システムによる推定結果からも,顔+姿勢認識FB条件の方がユーザの姿勢矯正の意識が高かったことがわかりました.
今後は,ゲームの楽しさとの両立や,顔認識失敗時のフィードバックがないより自然な普段の姿勢との比較,ゲーム以外のアプリケーションへの応用などを行っていく予定です.
詳細についてはスライドや論文をご参照ください.
発表スライド
論文情報
感想
久しぶりの学会発表となり色々不安でしたが,先生をはじめ研究室のメンバーのサポートのおかげでどうにか無事発表することができました.
発表では自分のiPhoneをミラーリングしシステムのデモを行ったのですが,直前まで急にサーバが落ちたりログインしなくてもシステムを使えるようにしようとしたりてんやわんやで,やはり直前に色々しようとするのは良くないなと痛感しました(何回目か分かりませんが…)
なんとか無事デモができてよかったです.
EC研究会で発表するのは初めてでしたが,萌芽発表やデモ発表など,これまで参加してきた学会にはない発表が聞けてとても良い体験になりました!
最後にはなりますが,論文執筆や発表にあたり多大なるサポートをいただいた中村先生,過密スケジュールの中実験に参加していただいた皆様に感謝申し上げます.