はじめに
こんにちは,中村研究室B4の渡邉健斗です.
2024年1月15日〜16日に沖縄で開催された第206回HCI研究会にて「スマートフォン利用時の姿勢矯正システムに向けた首の角度推定手法の提案」というタイトルで発表してきましたので,報告させていただきます.
研究概要
いきなりですがみなさん,普段どのような姿勢でスマートフォンを使っているでしょうか?
もしかしたら,下の図のようにスマートフォンを首より下に置き,上から覗き込むような姿勢で操作してしまう人も多いのではないかと思います.
このような姿勢は,身体に対して頭部が前に突き出た「頭部前方位姿勢」と呼ばれていて,長時間続けることでスマホ首やストレートネックになってしまうといわれています.
また,そもそも首は傾ければ傾けるほど首に負荷がかかるとされていて,下の図のように例えば45度首を傾けると,22kgもの負荷が首にかかっていることになります.
これらのことから,日常的に首の角度に注意してスマートフォンを利用することが望ましいと言えますが,自ら姿勢について意識し続けることは容易ではありません.
そこで,スマートフォン利用時の姿勢をリアルタイムに推定し,姿勢が悪い時にフィードバックを行うことで姿勢矯正への意識を支援できると考えました.
そのために,初期段階としてスマートフォンのみを用いて首の角度が推定可能かについて検討しました.
首の角度推定手法
スマートフォンのみを用いて首の角度を推定するため,スマートフォンの傾きと内カメラの映像に着目しました.
スマートフォンの内カメラには様々なものが映っていることが考えられますが,今回は「首が傾くほど内カメラ上の鼻から首元までの距離が短くなる」という下の図のような性質を利用し,
この値が姿勢が正しいとき(以後基準姿勢と呼ぶ)に比べてどれほど小さくなったかという割合を用いました.
しかし,この値は様々な要因によって変化してしまうと考えられるため,以下の3つの値を特徴量として扱うことで,首の角度を推定しました.
- スマートフォンの地面に対する角度
- スマートフォンに対する顔の角度
- 顔の大きさに対しての鼻から首元までの距離の,基準姿勢時に対する割合
機械学習・考察
首の角度推定手法の精度を検証するため,データセットを構築しました.
先行研究における課題を解決するため,「首の角度の定義を明確化すること」,「複数のパラメータに対して連続的なデータセットを構築すること」に注意し,データセット構築を行いました.
実際に大学生・大学院生の5名(男性4名,女性1名)に協力を依頼し,合計約86,000件のデータを取得しました.
ランダムフォレストを用いて回帰分析を行い,0度〜60度の範囲で10度ごとに分類したところ,正しく分類できた確率は約30〜40%程度でした.
多くの角度で正解の角度に分類できる確率が最も高かったものの,0度と30度のデータでは誤った角度と推定する確率の方が高い結果となりました.
精度が低下してしまった要因は様々なものが考えられますが,正解データや特徴量を取得する際に大きな誤差が含まれる場合があったことが大きく起因しているのではないかと考えています.
今後は,データの取得方法や機械学習の方法などを再検討し精度向上に努めつつ,実際にユーザに首の角度をフィードバックする姿勢矯正システムについて研究していく予定です.
詳細についてはスライドや論文をご参照ください.
発表スライド
論文情報
感想
3度目の学会発表ですが,初めてのテーマでの発表だったせいかとても緊張しました…
3度の発表を全て沖縄で経験していて,会場も前回と同じだったので慣れているかな…と思いましたが気のせいだったみたいです.
学会の合間の観光スケジュールやご飯の場所など,M2の方々に任せっきりになってしまい申し訳なかったのですが,
綺麗な海を見たり,美味しいものを食べたり,琉球ガラス作り体験をしたりなど,天才的な先輩方のおかげでとても楽しい旅になりました!本当に感謝です🙇
学会では様々なテーマの興味深い研究を聞くことができ,また以前のHCI研究会で聞いたことのある研究の続きの発表なども聞くことができて楽しかったです.
懇親会でお話しした学生がとても面白い研究をしていて刺激になり,今後も研究活動を頑張っていこうと思いました!
最後にはなりますが,データセット構築に協力していただいた方々,論文のチェックや発表練習など多くのサポートしてくれた研究室の方々,そしてご指導していただいた中村先生に心から感謝申し上げます.