こんにちは!中村研M1の菅野一平です.
今回は第59回EC研究会で発表をさせていただいたので,その報告をいたします
研究概要
これを読んでいる皆さんは絵を描かれたことがありますか?僕は趣味でイラストを描いてます.
絵を描く,イラストを制作するときには「見本の観察」がとても大切です.
しかし,初心者はどうしても描くことに意識が向いてしまい,観察をおろそかにしがちです.また,観察して構造を把握することは難しく,十分に観察したつもりでも絵のバランスが崩れてしまうことがあります.
そこで,これまで我々は観察対象のより多くの特徴に気づかせるため言語化に着目し,それによって観察を促すことを目的に研究を進めてまいりました.ここには詳しく書きませんが,もし興味を持っていただけたら↑のリンクを参照してください.この結果,イラスト制作者が観察対象の言語化をすることで細かい部分について書き込みが増えるということが明らかになりました.しかし,まだバランスが崩れていたり,多くの実験協力者が「自分のイラストに違和感がある」とアンケートで回答していました.
この原因を調査したところ「言語隠蔽効果」という効果によって観察が妨害されているのではないかと我々は考察しました.言語隠蔽効果とは非言語情報を言語化して記憶した際,その再認が妨害されるという効果です.例えば,人の顔を「目が細い」「鼻が高い」などの情報で記憶していると似ている人と誤認したりするのはこの効果が働いているといえます.
そこで今回,我々は「言語隠蔽効果を表れにくくしたうえで観察を促す手法を提案すること」を目的に研究を行いました.
今回我々が提案させていただいた手法が下の図のように見本の画像を部分的に見せるというものです.画像を部分的に見せることでイラスト制作者の視点を絞り,言語化をより具体的,多面的になると我々は考えました.言語隠蔽効果が表れづらくなり,より深い観察を促せると期待されます.
この手法を用いて模写を行ってもらうことで
①言語化が多面的,具体的になるか
②観察を促すことができるか
を検証しました
言語化の結果を分析することで,すべての視点に対してまんべんなく言語化される,言語化が多面的,具体的になることが明らかになりました.
実験協力者の視線を分析したところ,一部の人が分割あり条件において描画対象全体にまんべんなく観察していることを明らかにしました.
下の画像は注視点のヒートマップの1例です.左が分割なし条件,右が分割あり条件です.分割あり条件において赤や白い点が少なく,観察対象全体がまんべんなく観察されていることがわかります.
今後はこの結果を踏まえて初心者を支援するシステムを実装する予定です.
スライドと原稿は下記にありますのでご興味がありましたらどうぞ.
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