はじめに
こんにちは、中村研究室B3の松山です。
平成最後の冬も本番に入り、寒さの厳しい日が続いておりますがみなさんいかがお過ごしでしょうか。ちなみに私はまだエアリズムを着ています。ヒートテックには屈しません。
2018年12月4日〜5日に兵庫県の淡路夢舞台で開催された第180回HCI研究会にて、「ユーザの視線情報分析に基づく現実空間のBADUI検出に関する検討」というタイトルで登壇発表を行ったので、そちらの発表報告をさせていただきます。
研究概要
みなさんは使いづらいと感じるユーザインタフェースに出会った経験はありませんか?例えば、購入の手順がわかりづらい券売機やスイッチの位置がわかりづらい卓上ライトなど、そういったUI(BADUI)は現実世界に多く存在しています。
このようなBADUIを生み出さないためにいくつかのユーザビリティ評価手法が提案されています。しかしユーザの操作や発話に着目した既存手法では、操作の手がかりを探すようなユーザの視線の迷いを検出することは難しく、開発者がBADUIを見落としてしまう可能性が考えられます。
ここで、私たちはWebページのユーザビリティ評価手法として使われている「視線」に着目しました。具体的には正解の操作をしたユーザの視線を用いて、操作に迷っているユーザの視線を誘導することで、BADUIに悩んでいるユーザの操作支援を行うことができるのではないかと考えました。
そこで本研究では、BADUIで悩む人と悩まない人の視線が分離可能かどうかを検証する事前調査を行いました。なお、検証するにあたり私たちは「操作での迷い」と「選択での迷い」を分離する必要があると考えたため、それらの比較も行いました。
具体的な実験の流れは以下の通りです。
- 操作を必要とするBADUIをBADUIタレこみサイトから8種類、選択を必要とするオブジェクト(自動販売機等)を2種類選定
- それら10種類のオブジェクトを全て通る経路を設定
- 12名の実験協力者に協力してもらい、オブジェクトを操作する際の視線情報をメガネ型のアイトラッカーを用いて取得
実際にBADUI(大学内にある水飲み場なのですが、その水を出すボタンが分かりにくい)で悩んでいる様子を記録した動画がこちらです。なお、動画中の赤い丸は実験協力者の視線を表しています。どこかわからず目がさまよっているのが分かります。
また、分析をするにあたって以下の評価指標を用いました。
- 視線ログ
- 縦・横・斜めの視線移動回数
- 視線交差回数
- 視線移動量
実験結果より、以下のことが示唆されました。
- BADUIで悩んだ人は、悩まなかった人と比較して視線が大きく分散する
- BADUIで悩んだ人は、悩まなかった人と比較して視線交差回数が多くなる
- 商品選択時は、BADUI操作時と比較して垂直・水平の動きが多くなる
とはいえ、商品選択についてはどうしても水平垂直に並んでいるUIでしたので、そのUIの見た目との関係性に注目していく必要があると考えています。また今後は、さらに画像認識や注視箇所の分析といった分析手法を増やしたり、選定するBADUIの見直しを行ったりし、再実験を行おうと考えています。そして、応用先として、AR技術を用いることによるBADUIに悩んでいるユーザの操作支援を可能にするシステム等を考えています。
スライド
こちらが発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。
論文情報
感想
今年から研究活動を始め、原稿を書くことや登壇発表をすることも初めてだったため、わからない点や不安な点が多く大変でした。しかし、中村先生や中村研究室の先輩方の手厚いフォローのおかげで、本番は落ち着いて発表することができました。
また、「兵庫に来たら絶対に行きたい!」と思っていた神戸の南京町や夜景を見ることができて嬉しかったです!
最後になりますが、研究をはじめ原稿や発表練習等でサポートしていただいた中村先生や中村研究室の先輩方、実験に協力してくださった総合数理学部の学生方に、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
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