中村研究室への配属を(少しでも)検討されるみなさんへ。
こちらは、主に明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科の2年生の中で、本配属(3年次~4年次の2年間)として中村研究室への所属を検討している学生さん向けへのページとなっています。少しでも興味を持っている学生さんは是非とも軽く目を通してもらえればと思います。ちなみに、大学院からでの中村研究室配属も受け入れています。
さて、中村研究室では、ひとと情報の深い理解に基づく、ひとが情報をお手玉するように自在に扱えるインタラクティブシステムを実現することを目的としています。詳しくは、こちらに色々と研究の内容がありますし、こちらにこれまでの業績が学生のブログ記事で投稿されていますので参考にしてください。2015~2018年度の学生さんの研究テーマとしては、平均手書き文字および応用、ネタバレ防止関連、周辺視野利活用、タスク管理・推進、コミック工学、BADUI改善、印象推定関連、商品選択関係、音楽利活用、ダンスの個性抽出、ライフログとファッションなどとなっており、私がもともとやっていた研究や、やりたいと思って取り組んだ研究よりは、学生さんたちが切り開いてきた研究が多く、本当に多様です。
参考までに、下図は2018年度所属の学生さん達とその研究内容です。かなりとっちらかっているのがわかるかと思います。
上図のように、中村研究室では「ひと」にまつわる研究であれば、どんな研究に取り組んでいただいても大丈夫ですが、ハードウェア制作に関する研究は基本的には行いません(というか私が指導できません)。ハードウェア自体の制作を主としてやりたい場合は、小林研、宮下研、渡邊研、福地研、橋本研などFMS学科には色々な研究室がありますのでそちらを検討されるとよいのではと思います。もちろん、ハードウェアを使う研究はやりますので、そちらについては問題ありません。
まず初めに中村研究室では、私の家庭の事情(在宅での息子の医療的ケア)もあり、他の研究室に比べ平日の9時~17時と教員の勤務時間が短くなっています。また当然ですが講義や学務、出張などで研究室にいないこともあります。通常実験室(1008の学生部屋)に私は居ますので接触時間は少なくはないとは思うのですが、学生のみなさんに対して割くことができる時間には限りがあるというのがまず前提となります。
もともと研究室というのは、学生が自主的に参加の意思を持ち、相互に助け合うことが重要ですが、そうした事情もあって、中村研究室を志望される方には、研究室に参加し、相互に助け合って成長するという思いをより強くもってもらいたいと思っています。研究室運営についても、相互に助け合うことを重視しているため、ゼミは参加必須で対面のコミュニケーションを取る必要があるものが多いですし、参加必須の合宿も頻繁に行われます。また、発表練習や原稿のチェックもかなりの時間をかけて相互チェックをするのが義務付けられています。そのため、こういうのを面倒くさいと思う人には、向いていない研究室かもしれません。そうした研究室の中で、私は大枠としての研究室運営(予算獲得、イベント設定など)や、研究指導、論文添削、あと学生同士では指摘することが難しい、進んでいない/さぼっている学生さんを見つけて声をかけて回ったり、(だれでもふとしたことで可能性があるのですが)精神的に落ち込んでしまっている学生さんをケアしたり、運営上問題があるときにたまに怒ったりする役目(怒るのはしんどいのでやりたくないのですが)を担当しています。
以降では、中村研究室の研究・教育方針、そして3年次に研究室に配属されてからのスケジュール、日々のスケジュールなどについて簡単に説明したいと思います。ちなみに、中村研究室の研究・教育における詳細な情報はこちらにありますので、興味のある方は参考にしてみてください。
中村研究室の研究・教育方針
中村研究室に配属されると、学部3年生では自身のオリジナルの研究に取り組むのではなく、事前に私や先輩が用意したテーマ(私や先輩がこれまでにやってきた研究の続き)、共同研究に関するテーマなどに取り組んでもらいます。また、3年生の間に何らかの成果を出して学会発表を経験してもらいます。そして、4年生になったときに初めて自身のオリジナルの研究に取り組み、卒論発表をしてもらいます。そのため、3年次は研究が勢いよく進んでいき、4年次は停滞しつつも(テーマを考えるのは容易ではないため)着実に進んでいくということになります。
なぜ中村研究室では、3年生でオリジナルの研究に取り組まないのかについては下記のとおりです。
- FMS学科では3年次頭から研究室配属されるので、3年次は時間的に余裕があるため
- 多くの学生さんにとってアイディア出しは簡単なものではなく、苦悩することが多いため(それで研究が嫌いになる人も多いものです)
- まずはアイディア出しを飛ばして研究に取り組み、学会発表をすることで成功体験を得るため(例年1人当たり1~2回国内の研究会などで発表しています)
- 1年間で研究における実装、実験設計、実験実施、結果の整理、考察、関連文献調査、原稿書き、相互チェック、徹底したプレゼン練習、口頭発表、質疑対応、そして改善などなど、様々な難しく、そして楽しい経験をすることで研究のやり方(基礎)を学ぶため
- 研究室にとって重要なことの1つは研究の継続性であり、先輩が卒業したからと言ってその研究を放置してやりっぱなしにするのではなく、しっかり引き継ぐため
- 中村研究室の研究は何らかの研究予算(国の予算や企業との共同研究費)に関わるものが多く、そうしたものに貢献してもらうため
- 4年になって就職活動に取り組む前に、まずは研究の面白さ、難しさを知ってもらうことで、大学院進学の材料にしてもらうため
以上のように3年次頭から研究テーマが与えられるため、学会発表に割とすぐに行くことができることもあって、中村研究室は所属している学生さんはそれぞれ楽しそうではありますが(教員目線)、なんだかんだで忙しい研究室です。特に、締め切り間際や発表間際は原稿書き、修正、発表練習などで死にそうになったりいる学生さんも散見されます(割とみんな追い詰められないとやらないため)。また、基本的に平日は毎日研究室に来て研究してもらうことになるため、遊びたい、バイトでお金を稼ぎたい、楽に卒業したいと思う学生さんにとっては向いていない研究室だと思います。
さて、先述の通り、学会発表をひとつの目標とした研究の推進により力はどんどんついていくのですが、これは繰り返し繰り返し行っていかないとなかなか十分な力にはなりません。また、英語などでの発表についても経験してほしいのですが、そのためにはやはり時間が必要となります。そのため、私は学生さんたち全員に大学院への進学を推奨しています。大学院への進学をすすめる理由は進学ガイダンスなどで話をしていますが、10年後に生き残る力をつけるため、そして将来の様々なことへの確率をあげるためです。
例年、残念ながら2年生からの本配属における人気がない研究室ですが(第1志望での配属は16/33と50%以下)、大学院の進学率は86%(19/22)となっており、第1志望が少ない割に異様に高い進学率となっています。また、FMS学科の中では最も進学率の高い研究室となっています。つまり、第1志望じゃなく、大学院に進学するつもりがなかった学生さんもそれなりにいますが、研究を楽しみ or 周りの雰囲気に流され大学院に進学する研究室になっているようです。
そのため、大学院には絶対に進学するつもりがないというひとにとっては難しい環境になるかもしれませんので、その場合はそうした教育をしてくれる研究室を選ぶとよいと思います。なお、私の時間的な制約、予算的な制約、そして指導力にどうしても限界があるため、中村研を踏み台として自分を成長させるために大学院で他の研究室や他の大学を志望する学生さんも大歓迎です(とはいえ、できれば大学院で中村研を希望する学生さんを優先してあげたいとは思っていますが…)。
中村研究室では学部3年生の発表は必須となっていますし、それ以外でも学生さんたちに積極的に学会発表などをすることで外に出てもらいたいと考えています。遠方の開催地にどうしても出したがるのがうちの研究室の傾向で、その学会発表のためには旅費、宿泊費、参加費などが必要になるわけですが、そうしたお金については今のところすべて研究室の予算から出しているため、学生さんの個人負担はありません。ただ、今は幸いにして研究費を確保することができていますが、予算はいずれなくなる可能性もありますし、今後の皆さんの後輩が研究費を使えるようにするには、また新しい予算を獲得する必要があります。そうした予算獲得には、研究成果が必要となりますので、研究室に配属された場合は、自分が成果を出して学会発表することは自分のためだけでなく、後輩のためにもなるということを意識しつつ、しっかりと学会などで成果を発信していってもらえればと思います。実際、これまでに学生さんの活躍のおかげで、新しく共同研究が4件始まっていたりしていますので、こうしたサイクルが回り始めていると言えます。ちなみに、研究室の予算がどれくらいあるかは、中村研の先輩などにこっそり聞いてみてください。30人近くを学会発表させるにはそれなりにお金が必要なので、それなりにはあります。
学部3年生が研究室に配属されてからのスケジュール
まず、通年で予定されているのは、週に1度のゼミ(研究会や論文紹介など)です。論文紹介では担当は2週間に1度回ってきます。3年次は日本語のページ数の少ないものから始めていきますが、4年次からは査読に通った論文誌または国際会議の論文、修士以上は国際会議論文の紹介が必須となっています。また、学部生は週に1度のBゼミ、大学院生は週に2度のMゼミがあります。さらに個別のミーティングまたはグループミーティングとして、週に1回打ち合わせが入ります。それ以外の全体的なスケジュールは下記のような感じです。
- 4月1日
- 研究室に配属
- 4月上旬
- 中村&先輩による引き継ぎ研究テーマプレゼン&研究テーマ決定
- 新歓
- 4~5月
- 週に1度、中村と30分の個人ミーティングを実施して研究推進
- 週に1度、グループ学生同士でのミーティング
- 5月下旬~6月初旬
- 6月~
- 合宿で発表した研究テーマに基づきグループを編成し、週1度のペースでグループミーティングを実施しつつ研究を推進
- 研究の進捗度合いで研究発表する研究会を決め、締め切りに向けて実装、実験、論文執筆などに取り組む
- 例年、最初の研究会発表は8~11月になりがち。遅くとも3月までにはどこかの学会、研究会で1度は発表する。
- 1月下旬~3月
- 卒論発表会・修論報告会において1年間の研究成果発表
- 4年次に向けた自分のテーマでの研究の準備
- 随時(他研究室との、合同研究会)
- お茶の水女子大学の伊藤研究室との合同研究会
- 津田塾の栗原ゼミ、稲葉ゼミとのアイディアソン・ハッカソンの実施
- ドクター中松(関西大学松下研との合同研究会)
- 津田塾の栗原研究室との合同研究会
- 早稲田大学の森島研究室との合同研究会
- FMSの宮下研究室との合同研究会(2月ごろ)
- ほか
といった感じになります。前にも書いていますが、それなりに忙しいです。ちなみに、詳細なスケジュールはこちらにありますので参考までに。
研究室でお互い助け合うとはどういうことか?
さて、研究室ではお互いに助け合ってと書いていますが、いったいどのように助け合うのかについて簡単に書いてみたいと思います。結構色々と助け合わなければならないことがあるんだなと理解いただければと思います。
- 論文紹介や報告会、1対1でのプレゼンなど様々な場で、積極的に質問する
- お茶の水女子大学の伊藤先生もおっしゃっていますが、質問せざる者、卒業するべからずです。どんな質問でもよいですので質問していきましょう。余程のことでない限り研究に関する質問に良しあしなんてありません。発表者としては質問が出るとうれしいものですし、質問から色々な気付きがありますし、質問者にとっても質問するということはしっかり聞くということにつながりますし、自身の力も向上します。研究室メンバーに貢献すると思って質問していきましょう。
- 積極的に(研究に関する)雑談をする
- 私が研究のアイディアを思いついたり、研究が一気に進んだりするのは他人と雑談しているときだったりします。そのため、研究が行き詰っているときに一番重要なことは、ひとと喋ることだと考えています。喋ることによって自分の中で整理されていきますし、また整理されなくても他者は自分とは異なる視点を持っていることが多く、意外な気付き、発見があったりします。そうした点で、気軽に他人を捕まえて雑談しつつ議論をしてもらえればと思っています。また、困ったら誰かを捕まえて相談するよう指導しています。そのため、誰かに相談されたら積極的にのっていきましょう。それが自分のためでもあります。
- グループで徹底的にディスカッションする
- 研究室の全学生に対してミーティングするのは容易ではないですし、私の時間に限りがあるため、研究テーマに応じてグループを作り、研究を推進してもらっています。そのため、グループの仲間でお互いに助け合い、徹底的に議論して研究を進めていただきたいと思っています。
- 実装(プログラミング)でわからないところはお互いに助け合う
- 研究を推進し始めてよく躓くのはシステムの実装に関する部分です。エラーが出て躓くたびに私に質問しようとする人が結構多いのですが、そうされてしまうと私は何もできなくなってしまいます。そこで、実装(プログラミング)で悩んだら、他の学生に積極席に質問するようにしてください。また、誰かが質問してきたら、積極的にどうしたらよいかを一緒になって考えていってください。どうしても解決不可能な場合にのみ、私にもってきてください。ちなみにそうした問題は、私も解決できなかったりします。
- 実験に積極的に協力する
- 中村研の研究テーマは、「ひと」に関するものですので、どうしてもひとに使ってもらうなどして実験を行う機会が多くなります。なかでも、このまま実験を実施して問題がないかを確認するための予備実験は重要で、そのたびに実験協力者の時間が奪われていったりします。ただ、みなさんが実験を依頼するときには同じようにほかの人の時間を奪っていくことになるので、実験には積極的に協力していってください。
- 投稿する原稿をチェックする
- 私が全員の原稿を全部最初からチェックしていては時間がいくらあっても足りません。そこで、お互いに原稿をチェックしあい、私がある程度読みやすくなっている原稿をチェックするだけでよいようにしてください。ちなみに、例年こうした原稿の相互チェックにそれなりに時間がとられますが、この他人の原稿をチェックするというのは成長につながります。
- 発表練習をチェックする
- 中村研では学会などの口頭発表に対する発表練習を特に重視しています。学会などで発表を聞いてもらうということは、そのひとたちの時間をいただいて話をするということです。時給換算して、どれくらいのお金を出さないとそれだけのことができないかを考えてみると怖くなります。そのため、発表の質を上げることはまず必須です。そのうえで、興味をもってもらうため、何かをもって帰ってもらうため、何かをいただくために発表をよりよいものにしていきます。当然ですが、プレゼンテーション支援ツールするとどうしてもそちらに目が行くので、利用してはダメです。長くなりましたが、こうしたレベルアップのためには、発表練習が重要になりますが、毎回私がチェックすると時間がいくらあっても足りません。そこで、学生同士発表をチェックしあうようにしてもらいます。だいたい初めての発表の時は、1か月前くらいから平日は1~2日に1度くらいのペースで発表練習をすることになります。
- ポスターをチェックする
- 学会のポスターもありますが、合同研究会などではポスターで発表することがよくあります。そのポスターの作成において、デザインを指摘しあったり、わかりにくいところを指摘したりといったようにお互いにチェックしあうようにしてもらいます。
- 議事録に積極的に書き込む
- 中村研では、論文紹介や学会、発表練習など様々な場面でScrapboxを利用して議事録をつけていきます。議事録は研究室の資産となるものですので、積極的に書き込みに貢献していってください。また、質問やコメントもどんどん残していってもらいます。中村研に入ってきたら、まずはその膨大な議事録の山を見てみると良いと思います。楽しいです。
- イベントには積極的に参加する
- 基本的に中村研のイベント(合同研究会、合宿、懇親会)は参加が必須ですし、古臭くて申し訳ないのですが飲み会・交流会についても積極的に参加してもらいたいと思っています。ちなみに積極的に参加するというのは、ただ参加するという意味だけでなく、準備をしたり片づけをしたりといったことも含みます。みんなで楽しみましょう。
- 学年をこえて誰が何を得意か把握してください
- プログラミングが得意、文章が得意、デザインが得意、アイディア出しが得意、実験設計が得意、ひとを集めるのが得意などひとによってそれぞれ個性があります。誰が何を得意なのかということを把握して、ぜひともそのひとに積極的に相談していってください。そのためにも、学年をこえた交流が重要になります。
さて、研究には答えがないものですし、わたしも答えは知りません。つまり、研究においては、私(教員)と学生さんたちの間にも差はなく、お互いに研究を推進する仲間です。方針の指導をしたり、論文の添削をしたり、客観的にみるのは学生さんより得意ではありますが、それだけであり、学生と教員の差なんてしれてますし、ましてや学生同士の場合は学年の差なんてほとんどないに等しいです。そのため、助け合いにおいても学年は関係ありません。先輩だから、後輩だからなどのように考えず、お互いに助け合うことが重要になります。そういう意味で、先輩面したいひとには向いていない研究室かもしれません。
ちなみに、他所属の先生や学生に言われることが良くあるのですが、そうした助け合いのせいか、単純にそうした学生さんたちが配属されるからなのか、不思議なくらいに学年を越えて仲が良いです。ちょくちょく外部のひとから見ると先輩・後輩の関係がわからなくなるそうです。
研究室配属について
研究室配属では、皆さんご存知の通り「学生による研究室の順位」と「教員による学生の順位」を利用し、安定マッチングアルゴリズムを適用することによって配属先を決定します。そのため、研究室配属の可能性を高めたい場合は、教員による学生の順位をを上げることが重要になります。
で、この教員による学生の順位についてですが、中村研究室では成績(GPAと私の担当講義)評価と、面談での評価を利用して決定します。つまり、成績が仮にそこまでよくなくても、面談でよい評価を得ることで、十分挽回することができますので、研究室配属を少しでも検討しているひとは、必ず1月~2月中に私との個人面談を予約し、面談を受けてください。面談の時間は20分~30分程度を予定しています。
面談の予約方法についてですが、基本的にはメールで問い合わせしていただければと思うのですが、私は2月の平日9時~17時は、学内用務や出張がない限りは研究室(1008実験室)にいます(いないかもと思っても、中で座っていることが多いです)ので、研究室に入ってきて私に直接予約のお願いをしてくれてもよいです。また、中村研究室の他の学生さんたちは私の予定を把握していますので、いつ空いているかということを先輩たちに訊いてもらってもよいかと思います。
なお、面談では是非ともこれまで作ったものなどを見せてください。もちろん自主制作だけじゃなく、これまで所属していた研究室で作ったものや、過去のプログラミング系の講義で開発したものを見せていただいても大丈夫です。また、プログラム以外の制作物を見せていただいても大丈夫です。何かないと話のネタがなくて困ることもあるので、何かもってきていただき、色々と話をしましょう。
最後に、面談で会えることを、そして中村研究室で一緒に研究できることを楽しみにしています。
ピンバック: 研究室本配属を考える学部2年生向けのメッセージ(2021年) | 中村聡史研究室