宮古島で開催された第42回DCC研究会にて「スマートフォンのみを用いた首の角度リアルタイム推定手法のハッカソンによる応用可能性の検証」というタイトルで発表してきました(渡邉健斗)

投稿者: | 2026年3月5日

はじめに

こんにちは,中村研究室新M2の渡邉健斗です.

2026年1月22〜23日に沖縄県宮古島で開催された第42回DCC研究会にて「スマートフォンのみを用いた首の角度リアルタイム推定手法のハッカソンによる応用可能性の検証」というタイトルで発表してきましたので,そのご報告をさせていただきます.こちらの研究はHCI206EC75で発表させていただいたものの続きとなっていますので,ぜひ合わせてご覧ください.

研究概要

いきなりですがみなさん,普段どのような姿勢でスマートフォンを使っているでしょうか?
もしかしたら,下の図のようにスマートフォンを首より下に置き,上から覗き込むような姿勢で操作してしまう人も多いのではないかと思います.

頭部前方位姿勢

 

このような姿勢は,身体に対して頭部が前に突き出た「頭部前方位姿勢」と呼ばれていて,長時間続けることでスマホ首やストレートネックになってしまうといわれています.
また,そもそも首は傾ければ傾けるほど首に負荷がかかるとされていて,下の図のように例えば45度首を傾けると,22kgもの負荷が首にかかっていることになります.

首への負担(Hansraj, K. K.: Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head, Surg Technol Int, Vol. 25, No. 25, pp. 277–9 (2014).)

我々はこのような問題を解決するため,スマートフォンのみを用いて首の角度を推定する手法を提案し,一定の精度で推定可能であることを明らかにしてきました.
さらに,その首の角度推定手法をゲームに応用し,リアルタイムにユーザの首の角度をフィードバックすることが姿勢矯正を促進する可能性が示唆されました.
しかし,これまでの研究では我々が考えたアイディアを実現,検証してきましたが,この手法が本当にいいものなのか,他にどのようなものに使えるかなどその応用可能性については検証できていませんでした.
このようなことを検証する方法について模索したところ,ハッカソンを用いて実現している事例があったため,我々もこのような先行研究を参考にハッカソンを実施することにより応用可能性を検証することにしました.

ハッカソンの開催

ハッカソンとは数人でグループを組み,短期間でテーマに沿ったアプリケーションを開発するイベントのことです.今回ハッカソンを行う上で必要なことが2つありました.1つ目は,首の角度推定の精度を向上させることです.これまでのゲームへの応用でも,推定が不安定なことによりユーザ体験を低下させた可能性が示唆されていました.より多様なアプリケーションに適用するためには,推定精度を向上させる必要がありました.
2つ目は,首の角度推定手法を第三者が手軽に使えるようにすることです.ハッカソンとして多くの人に提案手法を使ってもらうため,またなるべく多くの時間をアイディア出しやアプリケーションの実装に当てもらうため,研究をあまり知らない第三者が簡単に手法を使えるようにする必要がありました.

これらの2つについて取り組み課題を解決し,大学生・大学院生12名の協力を得てハッカソンを開催しました.2人組×6グループに分かれてもらい,2時間のアイディア出しを行った後,実際に4時間かけてアプリケーションを開発してもらいました.また,最後にハッカソンに参加してない10名(教員1名,学生9名)から最終成果発表に対して評価をつけてもらいました.

結果・考察

まずアイディアセッションと最終成果発表で得られた合計19件のアイディアについて,その利用シーンと首の角度フィードバックの方法の観点から分類を行いました.その結果,様々なシーンで様々なフィードバックを行うアプリケーション案がほとんど偏りなく得られ,提案手法を用いた多様な応用先が考えられることが示唆されました.

得られたアイディアの分類表

アプリケーションの例

実際に開発されたアプリケーションを2つご紹介します.

1つ目はNeckTubeというもので,動画視聴時に特に姿勢が悪くなりやすいことに着目し,360度動画の上下の動きを首の角度を使って操作するものです.星空やオーロラなど,空を見上げるような動画を視聴するときに使うことを想定しています.

2つ目はNeck-Romancerというもので,首の角度に連動した釣りゲームです.画面中央に首の角度に応じて上下する釣り針があり,左右から泳いでくる魚が引っかかったら実際に上を向いて魚を釣り上げるようになっています.姿勢が良いほど泳いでくる魚の量やレアリティが増加し,姿勢が悪すぎると釣り針が下がって地釣りしてしまってゲームオーバーするなど,日常的に良い姿勢を維持することと首のストレッチの両方を促す仕組みになっています.

 

このようなアプリケーションに対して,評価者にその新規性や有用性などの観点から創造性を評価してもらったところ,全体的に中程度〜高い評価が得られました.ライブラリの使いやすさや推定精度なども同様に高い評価が得られ,理想としたアプリケーションに対しての実装の満足度は平均75%(±12%),首の角度推定を用いたアプリケーションのコアとなる機能の開発にかかった時間は平均62分(±33分)と,4時間と短い開発時間ではありましたが素早く満足度の高いアプリケーションを開発できたことがわかりました.

これらの結果から,提案してきた首の角度推定手法やそれを使いやすくしたライブラリを使って幅広い応用が可能で,また他の研究者や開発者など第三者にとっても利用しやすいものであることが示唆されました.

論文情報

渡邉 健斗, 中村 聡史. スマートフォンのみを用いた首の角度リアルタイム推定手法のハッカソンによる応用可能性の検証, 情報処理学会 研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC), Vol.2026-DCC-42, No.18, pp.1-8, 2026.

感想

今回で最後の学会発表となりましたが,まずは無事終えることができてよかったです.
また,DCC研究会は今まで参加したことがない学会ということもあり,普段とは系統の違う研究を様々聞けて興味深かったです.

隙間時間の観光も楽しく,ご飯のおいしさや景色の良さに圧倒されました!
あいにく天気にはあまり恵まれませんでしたが,晴れたときに見た海は本当に綺麗で感動しました!次はぜひずっと天気がいいときに行きたいです笑

最後にはなりますが,原稿執筆や発表練習など様々ご指導いただいた中村先生をはじめ,長時間のハッカソンに参加してくれた方,また研究に関わってくださったすべての方に感謝いたします.
ありがとうございました!

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