第194回HCI研究会で「負荷の高いタスクの並列提示がタスク遂行の意思に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(松山直人)

      2023/01/05

はじめに

こんにちは!中村研究室M2の松山です。

3ヶ月以上前になりますが、2021年8月23日〜24日にオンラインで開催された第194回HCI研究会にて、「負荷の高いタスクの並列提示がタスク遂行の意思に及ぼす影響」というタイトルで発表しましたので、そちらの発表報告をさせていただきます。

 

研究概要

みなさんはタスクを後回しにしてしまうことはありますか? 僕はよくタスクを後回しにしてしまい、溜まったタスクを慌ててやったり、消化するのを諦めてしまうことが多いです。そのため、人々はタスク管理ツールを使ってタスクの遂行を行っていますが、リマインドするだけではタスクへのモチベーションを向上させられるとは言い難いです。

そこで私はこれまでに、こうした問題を解決するため、人々が認知的負荷の低いタスクから取り組むことに着目し、遂行すべきタスクよりも負荷の大きいタスクを並列提示することで、遂行すべきタスクの負荷を小さく感じさせる手法を提案しました。また、提案手法によるタスクへの取り組み度合いが変化するかについて実験を行いました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

第192回HCI研究会で「負荷の高いタスクの並列提示によるタスク遂行への負荷軽減に関する手法の提案」というタイトルで発表してきました(松山直人)

しかし、こちらの研究では実験協力者のタスク遂行時の状況を考慮しておらず、タスクを遂行しなかった理由が負荷によるものなのかが明らかになっていませんでした。また、提示回数も十分ではないという問題がありました。

そこで、本研究ではタスクの種類を増やし、さらに環境を統制したうえで、提案手法の有用性について再検証を行いました。

実験

実験では、「負荷の大きいタスクの提示によって遂行すべきタスクのモチベーションにどのような影響が出るか」を目的に、提案手法とベースライン手法におけるタスクへの遂行意思を比較する実験を行いました。

具体的には以下のように提案手法やベースライン手法にのっとった文が提示され、遂行すべきタスクへのモチベーションを-3~+3で回答してもらう実験です。

実験で提示された文章の例

本実験では遂行すべきタスク(遂行タスク)として以下の10個を選定しました。

  • 食器洗いをする
  • 洗濯物を畳む
  • mikanで英単語を覚える
  • 短編小説を読む
  • カーフレイズをする
  • スクワットをする
  • Yahoo ニュースで記事を読む
  • 日本語の論文を読む
  • 部屋の片付けをする
  • 三角のポーズ(ヨガ)をする

また、並列提示用のタスク(比較タスク)として以下の10個のタスクを選定しました。

  • 風呂掃除をする
  • クローゼットを整理する
  • 英熟語を覚える
  • 小説『草枕』を読む
  • ジャックナイフ(V 字腹筋)をする
  • ジョギングをする
  • NHK の英語の記事を読む
  • 英語の関連研究を読む
  • 庭の掃除をする
  • プランクをする

なお、これらのタスクにおいて、実験協力者によってはそのタスクに取り組んだ経験がないために負荷が想像しづらい可能性があるため、実験開始前にどのよう

なタスクかを実験前に把握してもらうように設計しました。

ベースライン手法では遂行タスクのみを、提案手法ではこれらのタスクを総当たり的に組み合わせたものを提示します。

ベースライン手法と提案手法の例

また、状況の統制のため、以下の4つの条件を提示文に併記し、これらの状況を想像してもらいながら回答してもらうように指示を行いました。

  • 体力的に疲れている
  • 体力的に余裕がある
  • 精神的に疲れている
  • 精神的に余裕がある

なお、タスクへの主観的積極度や負荷の調査のため、実験開始前と実験終了後に、それぞれのタスクの負荷を-3~+3で評価してもらいました。

結果・考察

主観的負荷の差(遂行タスクの負荷から比較タスクの負荷を引いたもの)ごとに、タスク遂行への意思を+1〜+3と評価した割合(遂行意思割合)について分析を行ったところ、負荷の差が0以下、つまり比較タスクの負荷が遂行タスクの負荷より大きくなるにつれて、ベースライン手法より達成率が高くなっている様子が確認できます。

遂行タスクの負荷と比較タスクの負荷の差と遂行意思割合に関するグラフ

また、個人ごとの遂行意思割合について確認したところ、前実験協力者19人中13人において遂行タスクの負荷が小さい方が遂行意思割合が高い傾向がみられました。

これらの結果とこれまでの研究(HCI192にて発表)より、主観的負荷のより大きいタスク提示によってタスク遂行へのモチベーションを向上させ、遂行を促すことができる可能性が示唆されました。

スライド

こちらが発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。

論文情報

松山 直人, 中村 聡史. 負荷の高いタスクの並列提示がタスク遂行の意思に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2021-HCI-194, No.19, pp.1-8, 2021.

おわりに

まず、COVID-19が流行しておりさまざまな制限がかけられている状況にもかかわらず、オンラインによる発表の場を設けていただいた運営の方々に感謝申し上げます。しかし函館行きたかった、、、

この記事を書いているのは11月末ですが、だいぶ治ってきた感じがあるので、次の(おそらく最後の)学会発表はぜひ現地でやりたいと思います!

最後になりますが、研究をはじめ原稿や発表練習等でサポートしていただいた中村先生、中村研究室の方々、実験に協力してくださった総合数理学部の学生方に、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

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