第5回コミック工学研究会にて「コミックにおける読者依存性の高い地雷表現の基礎調査とその軽減手法」というタイトルで発表してきました(伊藤理紗)

      2021/03/20

こんにちは!中村研究室B4の伊藤理紗です。

2021年3月16,17日にオンラインで開催された第5回コミック工学研究会にて研究発表を行いましたので、ご報告させていただきます。

研究内容

研究内容はDEIM2021で発表した内容と同じですので、そちらの発表報告記事も読んでいただければと思います。

さて、みなさんはコミックを読んでいる際に苦手な描写に遭遇して辛い思いをしたといった経験はありませんか?
私は蓮の花托に代表されるような集合体が苦手で、あるコミックの中で出てきた銃痕が集合体に見え、しばらくそのコミックを読み進められなくなってしまった経験があります。

本研究ではこのような苦手な描写に着目し、「不快に感じたり苛立ちを覚えたりして受け入れられず、読むのを避けてしまう描写」を読者依存性の高い地雷と呼んでいます。例えば、虫が苦手な人にとっての虫や、猫を飼っている人にとっての猫がひどい目にあう描写が読者依存性の高い地雷と表現できます。
このような読者依存性の高い地雷は読者の苦手意識が原因であり、地雷に該当するからといってその表現自体を規制することは望ましくありません。

本研究ではまず、クラウドソーシングにてコミックの地雷表現に関するアンケート調査を行いました。その結果、約3割の人には地雷があるということが明らかになり、地雷の内容については虫や爬虫類、集合体、いじめの描写などといった回答が多くみられました。さらに、「恋愛漫画ではない作品の恋愛描写」といった回答や「急に」や「突然」などの単語を含む回答もいくつか寄せられ、これらの回答から想定していない描写や展開に対して不快に感じることで地雷となってしまうのではないか?と考えました。

そこで、読者がコミックを読みながら読者依存性の高い地雷にフラグを付与してもらい、その情報を集約して地雷の存在を事前に教えることで、つらさを軽減するという手法を提案しました。

そして、提案手法を用いたコミックビューアのプロトタイプシステムを実装し、地雷フラグを付与してもらう実験と地雷箇所の予告を含むコミックを閲覧してもらう実験を行いました。
今回の実験には吾峠呼世晴先生の「鬼滅の刃」と佐々大河先生の「ふしぎの国のバード」を使用しました。どちらもとても面白い作品ですのでまだ読んだことが無い方は是非読んでみてください!

実験の結果、

  • 地雷フラグの付与は手軽であること
  • その地雷をもたない人にもフラグを付与してもらえる可能性があること
  • 地雷表現の予告によって、該当ページへの不安が減少する可能性があること
  • 地雷表現の予告によって、該当ページへの興味は減少せず増加する可能性があること

が明らかになりました。

地雷を予告することによってネタバレにもなってしまい、興味度合いが損なわれるのではないかと予想していましたが、実際には「興味度合いが少し上がった」と「どちらでもない」という評価が最も多くなり、予想とは異なりました。
この理由としましては、今回予告を行った内容(虫の登場)がそのコミックの本筋に関わるような内容ではなかったため、ネタバレというよりも地雷の予告による怖いものみたさのような効果が働いたと考えています。

今後は、実験協力者の人数や読者依存性の高い地雷の種類を増やして実験を行い、さらに調査していく予定です。また、ユーザにとって威圧感のない予告画面を模索していきたいと考えています。

 

詳細については、後述する原稿とスライドを参照してください。

文献とスライド

伊藤 理紗, 中村 聡史. コミックにおける読者依存性の高い地雷表現の基礎調査とその軽減手法, 第5回コミック工学研究会, pp.18-25, 2021.

 

最後に

コミック工学研究会では発表の初めに発表者の好きなコミックを言うという、コミックに関する研究会ならではの決まりがあり、たくさんのコミックを知ることができました。残り少ない春休みは全て漫画に費やすことになりそうです。
ちなみに、私が発表時に紹介した作品は藤本タツキ先生の「チェンソーマン」と吉野マト先生の「ミーシア」です。是非読んでみてください!

発表後の質疑だけでなくScrapboxでも多くのコメントをいただくことができ、今後研究を進めるうえでとても貴重な機会となりました。

最後になりますが、今回の発表にあたりご指導いただきました中村先生、発表練習や議論にご協力くださった研究室の皆さんに心より感謝申し上げます。

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