はじめに
こんにちは。大学が長期休暇に入り、家でぬくぬくと平昌五輪を観戦している中村研究室B2の佐藤大輔です。
2018年1月22日〜23日に沖縄の琉球大学で開催された、第176回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(SIGHCI176)にて「利き手・非利き手の平均手書き文字における類似性の検証」というタイトルで発表を行ってきたので、そちらの参加報告をさせていただきたいと思います。
発表内容
本研究では、利き手と非利き手での手書きの違いについて、平均手書き文字の観点から定量的に分析を行うことによって、手書きのメカニズムを明らかにすることを目的とした研究になります。
皆さんは普段使わない非利き手を使って文字を書いた経験はありませんか? 例えば、利き手を怪我したときなど利き手に問題を生じたときや、左利きの人が右利きへと矯正するときなど、世の中には非利き手を使う場面も存在します。しかし、慣れていない手で字を書いてみるとなかなか上手く書くことができません。
これまでに私たちは複数個の手書き文字を平均化することで手書き文字のブレを無くす研究を行ってきました。その中で、どうも利き手で書いたものと、非利き手で書いたものは全然異なるのに、ブレを無くしてあげることで利き手で書いたものと非利き手で書いたものが似通うことに気づきました。
そこで、この研究では、利き手の文字と非利き手の文字は同一のものになるのではないかと考え、利き手と非利き手の平均文字をユーザ同士で比較する実験を行いました。
上図は利き手文字(赤)と非利き手文字(青)を比較した図になっています。比較するにあたっては色々な方法が考えられると思うのですが、今回は単純に利き手平均文字と非利き手平均文字の差分を求めるため、下図のようなユークリッド距離を計算する手法を用いました。
具体的には、ユーザにひらがなを利き手と非利き手でそれぞれ10回ずつ書いていただき、次の2つの項目について検証を行いました。
- ユーザごとに利き手と非利き手の平均文字同士を分析する
- 文字ごとに利き手と非利き手の平均文字における違いを分析する
上記について実験を行ったところ、類似性については下表のような結果となりました。これは、各ユーザの利き手と非利き手平均文字をユーザごとに比較したときのひらがなの平均値を表した表になります。この結果から、自分自身の利き手と非利き手の平均文字は、他人の手書き文字に比べて類似することが分かりました。
続いて、上図はユーザの平均値を文字ごとに比較した表になります。この結果から、文字によって利き手と非利き手の文字に類似性の違いが表れ、文字のストロークの特徴によって利き手と非利き手の書き方に違いがあることが示唆されました。
実験より具体的には、
類似度が高い文字の特徴
- 縦方向のストロークがある
類似度が低い文字の特徴
- 横方向のストロークがある
- 急な折り返し部分がある
- 1ストロークあたりの長さが長い
というような特徴が考えられました。
これらの検証結果より、利き手と非利き手の文字には違いがなかったため、私は矯正はそこまで重要ではないではと考えています。幼い頃に書き手を矯正する方もいらっしゃいますが、この結果は矯正することよりも、文字の形を覚える方が大事であると示唆しているようにも思えます。また,利き手を怪我した場合ですが,非利き手でも利き手の代用が可能になると期待されます。
発表スライド
発表で用いたスライドになります。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。
論文情報
論文は下記より閲覧できるので、よろしければご一読してください。
感想
今回,初めて論文や研究活動に携わらせていただきました。最初は研究会発表まで出来るか自信がありませんでしたが,中村研究室の先輩方や中村先生の手厚いフォローのおかげで、無事発表を終えることができました。発表はかなり緊張したため多少戸惑ったり、質疑応答では質問の意図を捉えられず、上手く答えることができなかったので、次に発表する機会があれば練習をしっかり積み重ねた上でリベンジしたいです。
今回の研究活動を通して、学ぶことが多かったので、とても貴重な経験をさせていただきました。この経験を来年度からの研究活動に活かしていきたいと思います。
研究会の合間にはレンタカーで美ら海水族館や美味しいものを食べに先輩方に連れて行っていただきました。運転してくださった新納さん,斎藤さんありがとうございました!
最後になりますが、年末年始に原稿チェックや発表練習などに付き合っていただいた中村先生や新納さんをはじめとする中村研究室の先輩方にはこの場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。