はじめに
こんにちは,中村研M1の重松龍之介です.
2026年3月9日〜11日に芝浦工業大学で開催されたHCI217にて『部分的な視覚的強調が短期記憶に及ぼす影響:デジタル時計の時刻情報と非時刻情報の比較』というタイトルで発表を行なってきましたので,ご報告をさせていただきます.
研究概要
背景
人は日常生活の中で,移動や作業の区切りなどさまざまな場面で時計を確認しています.しかし,直前に時計を見ていたにもかかわらず,再び時間を確認してしまう経験は少なくありません.これは,時計を視認しても,その時刻が十分に記憶されていない可能性を示しています.
目的
本研究では,以下の2点を明らかにすることを目的としました.
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人は時計を一瞥した際に,時刻情報をどの程度記憶できているのか
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時計表示の一部を視覚的に強調することで,記憶成績がどのように変化するのか
また,時刻情報特有の影響を検証するため,4桁の数字情報をベースラインとして比較を行いました.
提案手法
本研究では,デジタル時計の表示において,特定の要素を視覚的に強調する手法を用いました.具体的には,フォントサイズを変更することで,時計表示の一部を強調する方法を採用しました.
表示条件は以下の3種類としました。
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通常表示:すべて同じフォントサイズ
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左要素強調:左側の要素を強調
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右要素強調:右側の要素を強調
時刻情報では「時」と「分」,数字情報では「上位2桁」と「下位2桁」をそれぞれ強調対象としました.
時刻情報
数字情報
実験
実験はスマートフォンのWebブラウザ上で実施しました.
参加者はクラウドソーシングを通じて募集し,最終的に873名のデータを分析対象としました.
実験では以下の手順を行いました。
参加者が意図的に情報を覚えないようにするため,刺激提示の前後には簡単な操作タスクを挿入しました.
参加者には6つの提示条件のうち一つが割り当てられ,提示と回答はそれぞれ1回ずつとしました.
結果と考察
通常表示条件においては,時刻情報の完全正答率は78.1%,数字情報は81.7%であり,時刻情報の方がやや低い傾向が見られました.
また,強調表示の影響について分析した結果,
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時刻情報
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強調された要素の正答率は向上する傾向
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非強調要素の正答率は低下する傾向
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数字情報
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強調表示による正答率の向上は確認されず
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むしろ成績が低下する傾向
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が観察されました.
これは,時刻情報が「時」と「分」という意味的な構造を持つため,強調によって注意が特定の要素に集中しやすい一方で,数字情報ではそのような構造がなく,強調によって情報のまとまりが崩れた可能性があると考えられます.
さらに探索的分析として年齢別の分析を行ったところ,高年齢群では強調された要素の正答率が向上する傾向が見られました.
この結果から,部分的な視覚的強調の効果は,情報の構造や利用者の特性に依存する可能性が示唆されました.
発表スライド
論文情報
おわりに
今回は初めて,東京開催の学会に参加しました.そのためリラックスした状態で発表に臨むことができました.
また,学会期間中は美味しいご飯を食べたり,発表後にはお台場にも行ったりと,とても充実した3日間を過ごすことができました.
最後に,本研究を進めるにあたり多くの方にご協力をいただきました.この場を借りて感謝申し上げます.ありがとうございました.






