初めまして
今年はあなたにとって良い年でしたか。私にとってはとてもよき年でした。中村研究室 M1の田村柾優紀です。
今回は2017年11月16日、17日に山形県上山市のかみのやま温泉 仙渓園 月岡ホテルで行われたグループウェアとネットワークサービス 2017(GNWS2017)に参加し、「Uniotto: グループ型音楽鑑賞手法の提案と実装」というタイトルで口頭発表を行いましたので報告させて頂きます。参加報告はこちらに、また今回発表してきたものに関するアプリはUniottoの公式サイトにも情報がありますので、是非それらもご覧いただければと思います。
それでは、発表してきた研究について簡単に説明させて頂きます。
研究の詳細
背景
友達と一緒にドライブしている時にみんなで音楽を聞くと、その場が盛りがってとても楽しいですよね!
しかし、音楽の選曲を誰か一人が独占し、さらにその人が他の人たちの好みと大きく離れすぎた選曲を、何度も行った場合には、その場の空気が冷めてしまいますよね。
そうした問題を解決するため、鈴木らの研究[1]では、そのグループ内のメンバーが、それぞれ所有している音楽を基に、グループに適したプレイリストの生成を行なっています。そのため、グループ内の誰かがその生成されたプレイリストを用いることで、グループ全員の好みを考慮した再生を行うことを可能としています。
しかし、事前に作成されたプレイリストを用いた場合には、次に流れる音楽が確定してしまっているため、その次に再生される音楽よりも、再生中の音楽に強く関連している音楽(同じドラマで使用された音楽、同じ時代に流行った音楽など)を思いついた場合でも、次に再生される音楽を変更することは出来ません。
そこで我々はこの研究で、システムとユーザが協調可能なグループ型音楽鑑賞手法を提案し、プロトタイプシステムをiOSアプリとして実装しました。
システムとユーザが協調可能なグループ型音楽鑑賞手法
その具体的な手法としては、自動選曲により再生し、意図を込めたいときのみ手動で選曲を行うことが可能な手法です。その手法を用いることにより、次に再生が予定されている音楽よりも、再生中の音楽に強く関連している音楽を、ユーザが思いついた場合には、その音楽をユーザが選択することで、次に再生される音楽を変更することが可能となります。
その私たちの提案手法では、意図を込めた選曲が可能となりますが、意図を込めた選曲が必ずしもそのグループに適した曲であるかは保証されません。そのため、意図を込めた選曲を行える機会が誰か一人に偏った場合には、他のメンバーは不満を感じる可能性があります。また、ユーザが持っている音楽アーカイブの全体を知ることが出来た場合には、所持しているユーザの趣味などを推定することが出来てしまうため、他の人やサービス側に自身の音楽アーカイブを知られたくないと考えている人は多いです。そのため、選曲権の不公平性の問題と、推薦アルゴリズムにおけるプライバシーの問題に配慮する必要があります。そこで、ここでは詳しい説明を割愛させて頂きますが、私達は以下の手法でそれぞれの問題に対して配慮を行ないました。
- 選曲権の不公平性 → リレー形式の音楽再生
- 推薦アルゴリズムにおけるプライバシー → 再生済み楽曲と個人の音楽アーカイブを考慮した推薦
使用実験
使用実験では、実際にUniottoを使ってグループで音楽鑑賞を行なってもらいました。そして、音楽鑑賞の終了後に、用意したアンケートに答えてもらい、提案手法がグループ型音楽鑑賞の支援につながったかを検証しました。
実験の結果、システムとユーザの協調に対してのメリットに関する自由記述では、「場の空気にあった音楽を探す手間が省ける」、「たとえ変な選曲を自分で行なってしまっても、システムのせいにできる」という意見が得られ、デメリットでは、「推薦された音楽が好みではない時に選曲が面倒」、「思っていない音楽が流れて欲しくないから選択しようとして焦る」という意見が得られました。システムとユーザの協調では、意図を込めた選曲が行えることで、より柔軟な選曲を行えるようになると期待し、手法の提案を行いましたが、意図を込めた選曲が可能となった良さを明らかにする様な意見は得ることは出来ませんでした。しかし、メリット・デメリットに関する自由記述の両方で、推薦に介入したい、つまりシステムとユーザの協調が必要とされているということを示唆するような意見を得ることが出来ました。
システムとユーザの協調以外の提案手法の要素も実験で検証していますので、以下のプレゼンスライドや論文を是非ご覧ください!
プレゼンスライド
論文リンク
デモ動画
感想
今回発表した研究は個人の研究ではなく、チーム単位で研究案を出す所から取り組んだ初めての研究でした。チーム単位での研究は、誰か一人だけが主体的に研究を行うのではなく、チーム全員が主体的にその研究に取り組むため、一人で研究を行うよりも、案出しや実装、実験設計などにおいてスピード感を持って取り組むことが出来たように感じます。一方で、チームでの連携がうまく取れなかった部分もかなり多い為、今後はその部分をうまくチームで連携を取れるように頑張りたいです。
参考文献
[1]鈴木 潤一,末次 尚之,北原 鉄朗.複数人が同一空間で音楽を聴くための選曲・再生システム,情報処理学会論文誌,57(12),2526-2530 (2016-12-15) , 1882-7764.