第121回CN研究会にて「Web上での繰り返し選択実験における単調さが不適切な慣れに及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(髙久拓海)

   

はじめに

こんにちは.中村研究室M1の髙久拓海です.

2024年1月22~23日に伊豆大島で開催された第121回CN研究会にて「Web上での繰り返し選択実験における単調さが不適切な慣れに及ぼす影響」というタイトルで発表しましたので,そちらについて報告させていただきます.

研究概要

背景

クラウドソーシングというサービスは安価に短期間で膨大なデータを取得できることが可能であるため,オンラインでデータを収集する際によく使用されています.一方で,オンラインでの作業は実験参加者の状態を注意する監視者などがいないため,知らずのうちに実験参加者が何らかしらの影響を受けている可能性が考えられます.このような影響を受けてしまうと,登録されるデータに一貫性が無くなるといった問題が生じる可能性があります.

ここで,私たちは作業中に生じる影響として不適切な慣れに着目しました.また,作業の回答時間に着目することで登録されたデータに不適切な慣れの影響が生じているかどうかを分析し,GN118でその結果を発表しました(詳細はこちらの記事をご覧ください).

しかし,こちらの研究会で

  • 回答時間による分類だけで,作業者が不適切な慣れの影響を受けているかを検出でか?
  • 不適切な慣れの影響を検出するためには,作業時のユーザの意思決定を分析する必要があるのではないか?

といった意見をいただきました.

そこで,私たちはユーザの意思決定を分析する手法としてユーザが動かしたマウスの軌跡に着目し,不適切な慣れの影響を検出できるか再度分析を行いました.

分析

前述したとおり,私たちはユーザの意思決定をマウスの軌跡を用いて分析を行いました.具体的には,マウス軌跡の形状を基にユーザの回答を以下の4つのパターンに分類しました.また,分類条件などのより詳細な情報については論文をご覧ください

  • 直線型:マウスの軌跡が一直線に進んでいる回答
  • 旋回型:マウスの軌跡が大きく旋回するような回答
  • 方向転換型:マウスの軌跡が途中で方向を変える回答
  • 中心維持型:マウスの軌跡がほとんど中心から動かない回答

それぞれの軌跡パターンの例

結果

先ほど分類した4つの軌跡パターンごとに分析を行い,どの軌跡パターンで不適切な慣れが生じやすいかを分析しました.ここで,分析としてそれぞれのパターンで同じ回答位置を選び続けた割合と回答時間に着目して分析を行いました.その結果が以下の表になります.

この表より,直線型と中心維持型は同じ位置を選び続ける回答が多く,また回答時間も全体(通常時)に比べ1秒ほど短いことがわかりました.一方で,旋回型と方向急転換型は同じ位置を選び続ける回答が少なく,回答時間も通常と同じ/長いです.

これらのことを纏めると

  • 旋回型,方向転換型の回答の多くは真面目に回答されている.
  • 不適切な慣れの影響を受けている回答は,直線型と中心維持型に分類されている可能性が高い.

ということがわかりました.

今後は,この分類の判定制度を更に上げれるように分析を行っていきたいと考えています.

発表スライド

書誌情報

髙久 拓海, 中村 聡史. Web上での繰り返し選択実験における単調さが不適切な慣れに及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告コラボレーションとネットワークサービス(CN), Vol.2024-CN-121, No.21, pp.1-7, 2024.

おわりに

強風や大雨で事前に予約していた行きと帰りの船が欠航する可能性があるなど,非常にドタバタした学会参加でした.それでも,学会で貴重な意見をいただけたことや,懇親会でたくさんの方と交流ができてとてもいい経験になりました.今後の研究に活かしていきたいと思います.

伊豆大島で見た夕陽

伊豆大島で食べたカツ丼.美味しかったです!!

 

最後になりますが,ご指導いただいた中村先生,研究室のみなさまにこの場を借りて感謝申し上げます.ありがとうございました.

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