インタラクション2025に聴講で参加してきました(金谷一輝)

投稿者: | 2025年3月5日

こんにちは、B3金谷一輝です!

2025年3月2~4日に学術総合センター内 一橋記念講堂で開催されたインタラクション2025を聴講してきましたので、その報告をさせていただきます。

この記事では、気になった研究や実際に体験した研究など3日間を通して印象深かった研究に加え、聴講参加の感想についてお話させていただければと思います。

 

気になった研究

登壇発表

ClothTalk: 騒音環境でも GPU なしでリアルタイムに綺麗な声を入力可能な導電布マイクロフォン

平城裕隆 (東京大学/産総研),金澤周介,三浦貴大,吉田学,持丸正明 (産総研),暦本純一 (東京大学/Sony CSL)

こちらの研究は、ワイヤレスウェアラブルデバイスにおいて大きな声を出さずに高品質な音源分離と雑音低減を目的としたリアルタイム音声強調マイクロフォンの提案です。導電布によるダイヤフラムのマイクを曲げることで指向性を高め、装着者の発話を支配的に入力するとともに、周囲の全方位からのノイズを低減することを可能にしています。

本研究は最優秀論文賞を受賞しており、登壇発表では発表者が実際にデモを行いシステムの有用性を示していました。またワイヤレスマイクの装着したときの相手からの顔の見え方まで議論されており、マイクを制作することだけでなく見え方まで考えられているのがすごいなと思いました。

 

振り返りスタンプ:イラスト描画における手軽でポジティブな振り返り支援手法

田近 聖奈,渡邉 拓貴,竹川 佳成,平田 圭二 (公立はこだて未来大学)

こちらの研究では、イラスト描画における振り返り行為の労力や精神的負担を軽減し、ポジティブな振り返りを促進するシステムの設計・実装・評価を行いました。学習者の自己肯定感を促すためにポジティブな内容のスタンプを多く用意し、イラストを振り返るとポジティブな振り返りが増えることが明らかになりました。

本研究はスタンプという操作性が低く直感的に扱えるものでポジティブに振り返り、技能の熟達に役立てることが重要であるが、実際にイラストのみならず普段のタスクに応用できそうだなと感じました。スタンプ自体の操作性は低いですが、デザイン次第なのかなとも思いました。

 

デモ発表

自由記述式の設問の回答意欲向上のための共感して褒めるアンケートシステムの提案

上原 大,高島 健太郎 (東京理科大学 経営学部 国際デザイン経営学科)

こちらの研究は、アンケートにおける自由記述式の設問において共感して褒めるWebアンケートフォームを作成し、回答意欲を高めると同時に記述量と有効回答率が増えるかどうかを検証したものです。感想としてはユーザが回答を入力すると、幾何学的な図形で作成されたキャラクターがその回答内容に応じてすぐに褒めてくれるので、あたかも隣で褒めてくれているかのような感覚で回答を入力することができました。また先輩の研究が引用されており、将来こういう形でいろんな人に引用されるような研究をしたいと思いました。

 

対面型,非同期型,非言語型を組み合わせたコミュニケーションの探究

橋本 知奈 (宮城大学),鈴木 優 (ノートルダム清心女子大学)

こちらの研究は、対面・非同期・非言語領域の3つを組み合わせたコミュニケーションに着目をし、非同期とはその場その時の思いを、非言語領域としては絵文字を用いたコミュニケーションの探求を目的とした研究です。実際に2つの家族に用いて実験を行っており、玄関など会話場所を共有しながら帰宅時など任意のタイミングで直感的な会話ができるといったものです。言葉ではなく絵文字だけで自分の思いを伝えるというのが難しく、家族間ではなくシェアハウスなどにも応用できそうだなと感じました。

 

実空間における捕球時の振動を提示するVRキャッチングシステムの提案

江草 浩仁,栗原 渉,兼松 祥央,三上 浩司 (東京工科大学)

こちらの研究は、VR空間における野球のキャッチャー体験の没入感を与えることを目指した研究です。触覚提示デバイスのキャッチャーミット型デバイスと提示する実世界音を組み合わせたものである。実際にストレートとスライダーの2球種を体験して、没入感自体は上がったが振動がやや弱いように感じた。また球速に応じても振動が変化すると面白くなるのかなと感じました。野球×VRだと、打者目線の研究が多いが捕手目線と異なる視点での研究であり印象深かったです。

VR体験中の僕

 

Paper Gallery: 論文要約スライドを活用するためのWebギャラリー

牧野倫太郎,高橋治輝,松村耕平 (立命館大学)

こちらの研究は、研究室で蓄積された論文要約スライドを効果的に活用することを目的としたwebシステムです。PDFやパワーポイントなどのスライドをギャラリー形式で一覧表示し、新しい研究課題を考えるきっかけであったり、スライド作成者への質問など、収集された過去のデータを再活用する仕組みです。データの取得などはCosense(旧Scrapbox)で行っており、中村研究室でも活用できそうな仕組みだと感じました。また論文要約スライドを組み合わせて研究課題をLLMが考える仕組みもあり、便利だと感じました。

 

1枚の写真をインタラクティブ動画に変換する一手法

爲谷 秀太,佐藤 隆 (東京電機大学)

こちらの研究は、物体認識と動画生成AIを用いて、たった1枚の写真を直接操作可能なインタラクティブ動画に変換する手法を提案しています。プロトタイプの動作検証ではありましたが、下の動画のようにモナリザの手を上げ下げしたりできていて非常に面白かったです。個人的にはモナリザの口を上げ下げするのが面白かったです。

 

PUNIcon: ゲルを用いた柔らかい物体の物体識別およびインタラクションの取得

大門 亮哉 (青山学院大学 理工学部),小栗 芙美果 (青山学院大学 大学院理工学研究科),上堀 まい (青山学院大学 大学院理工学研究科/日本学術振興会 特別研究員),正井 克俊 (九州大学 システム情報科学研究院),杉浦 裕太 (慶應義塾大学 理工学部情報工学科),伊藤 雄一 (青山学院大学 理工学部)

こちらの研究は、操作対象として柔らかいゲルを用いたタンジブルインタフェースで直感的なインタラクションを提案しています。赤外線LEDとフォトトランジスタを備えた台座でゲル内部の赤外光の透過を検出し、機械学習でデータ解析をしゲルの識別とインタラクションを推定しています。登壇発表が聞けなかったので、デモ発表を楽しみにしていたのですが、この発表のブースがLEDではなかったため、正確に識別することができず残念でしたが、ゲルを初めて触ったので楽しかったです。

 

 アイディエーションにおける批評的な議論を促すためのLLM 同士の対話を触媒としたワークショップの設計

中條 麟太郎,松井 克文,杉山 昂平,苗村 健 (東京大学)

こちらの研究は、創造性が必要とされるタスクにおいて、参加者同士の議論を支援するために、LLM同士の対話と触媒として利用し、参加者が共同で批評を行うインタラクションを提案しています。LLM同士の対話が参加者の最初のアイデアに対して順に批評することによって生成されます。そこに対して参加者同士が議論しながら書き込みを行うことで、LLMの出力結果を共に批評することで初対面の参加者同士であっても議論が活性化することが示されました。LLMの出力をいきなりすべて表示するのではなく、参加者が順に出力することで参加者同士の理解度に差が出ないようにすることがかなり面白いと感じました。

 

思い出を体験する VR 日記

劉 天鑑,加藤 邦拓,太田 高志 (東京工科大学)

こちらの研究は、デジタル技術を活用した記憶保存と過去の振り返りの手法を支援することを目的とした研究です。ユーザが記録した写真のEXIF情報などをもとに、日記のエントリに対応する情景や雰囲気をVR空間内で再現し、そのときの気持ちや体験を追体験できるシステムです。僕が昔、記憶にある情景をVR空間上に再現してみたい!と思っていたので、それに一番近い研究だなと感じました。また撮影者が実際に撮影した写真からパノラマ画像を取得し、さらに日記の内容に合わせて画像加工を行うというのもこだわっていて素敵だなと感じました。

 

FakedTopic: 誤情報・偽情報の活用による 初対面コミュニケーション支援の試み

佐々木 颯太,西本 一志 (北陸先端科学技術大学院大学)

こちらの研究は、フェイクニュースの拡散力に着目をし、自己や相手に関する情報にとらわれずに心理的距離を適切に保つ話題選定をすることで、初対面のコミュニケーションを支援するという研究です。トピックとなるフェイクニュースの真偽もクラウドソーシングを使って考慮しており、すごいと思いました。会話自体の形態素分析などは行っていないとのことだったので、実際に分析を行い、フェイクニュースに関する会話なのか、フェイクニュースから派生した会話になるのかなど、議論の余地がある研究だなと感じました。

 

感想

1年間研究というものに携わってきた過程で名前を聞いたことのある先生方が多く、また興味のある発表も多かったため、率直に楽しかったです!非公式ではありましたが、懇親会にも参加させていただき、他の大学の学生さんと話す機会もあり意見交換を含めさまざまなお話をできて非常にうれしかったです!登壇発表もインタラクティブ発表もレベルが高く、国内でのトップカンファレンスと聞いていただけありました。今回はジュニア会員として無料で聴講に参加をさせていただき、得られるものが多かったなと感じました。

懇親会ではクラフトビールを飲ませていただきました

 

中村研究室からは、2名(関口祐豊さんと木下裕一朗さん)がそれぞれデモ発表とデモ・登壇発表を行いました。先輩方の発表は本当にすごく、登壇発表ではかなりの大衆を前に緊張することなく発表をし、質疑も難なく回答していたり、デモ発表ではいろんな方とシステムについて熱い議論を行っていました。インタラクティブ発表賞の一般投票では先輩2人とも上位に食い込んでいましたが、惜しくも受賞ならずといった感じでした。同じ研究室の後輩としては賞をあげたいくらいでした!さすがですね、こういう先輩方になりたいと3日間を通して感じました。

ここでいただいた刺激をモチベーションに変えて、目の前の研究を少しずつ進めていこうと感じました。

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