第110回GN研究会で「入力フォームでのフォント変容による 『炎上』抑制手法の提案と検証」というタイトルで発表しました(水野颯)

      2023/01/05

はじめまして。B4の水野颯(みずのはやて)と申します。

2020年3月16・17日に開催された「第110回グループウェアとネットワークサービス研究発表会」に参加しました。
本発表会は新型コロナウイルス感染症の影響で、オンライン開催という形で行われました。
ミーティング・チャットツール「Zoom」を用いて、PC画面とマイク音声を共有しての発表となります。
というわけで発表の様子の写真などはありません…

発表に使用したヘッドセット (https://www.elecom.co.jp/products/HS-G01WH.htmlより)

発表内容

研究概要

本研究はSNSにおける「炎上」を防止するための研究です。

「炎上」は非常に多くの人々や組織に対し、精神的、経済的な影響を及ぼしうる社会問題となっています。「炎上」してしまった個人が精神を病んでしまうのはもちろん、企業が「炎上」すれば、その商品やサービスにも影響が及んでしまうこともあるので問題だと言えます。

そうした「炎上」を防止するためのアプローチとして、ここでは「炎上してしまう側」の人が「炎上」に繋がりやすいような投稿をしてしまわないようにする研究はあり、「炎上」に繋がりそうな書き込みを自動的に判定し、差し替える、というものがあります。ただ、そうした手法では、本来の投稿文の意図を大きく外れる書き換えがされてしまう恐れがあるほか、皮肉を含んだ書き込みなどに対応しきれないという問題点がありました。

そこで、本研究では、ユーザが自分で投稿を見直し、「炎上」を予防することを目的として、入力フォーム上で自身の書き込みを注意深く認識するような示唆を行うため入力フォームでのフォント変容を行う手法を提案しました。ここで言うフォントとは、文字のフォントのことです。 明朝体 とか、 ゴシック体 とかです。

こうしたフォントを活用する理由として、文章を読む際の印象がフォントによって変わるという先行研究があり、そちらを参考に、文章を書く際の印象もフォントによって変わるのではないか?という仮定を立てたためです。そして、この印象の変化を「炎上」しない書き込みの示唆に役立てられないか、というのが本研究の趣旨となります。

実際に行ったのは、様々なフォントを適用できる入力フォームを用意し、実験協力者の方々にそれを用いてコメントしてもらうことで、フォントによる影響を調べる、ということでした。

 

実験

以下の画像のような実験用サイトを用いて、実験協力者の方々からコメントを収集しました。(入力フォームのフォントが変更されているのが分かるかと思います)

実験用サイトのスクリーンショット

 

また実験に用いたフォントは以下の8種類です。

また、コメントをしてもらうための話題として、以下のトピックを用意しました

 

このコメント実験を「Yahooクラウドソーシング」を用いて集めた495名の協力者の方に行ってもらいました。

 

実験結果と考察

結果はとして得られたデータは以下の通りです

フォントごとの文章入力量の違いを取るために、ユーザひとりひとりの入力文字数を0を基準に均すことで比較しました。

この結果からは、各フォントによる差はそれほど大きくないように見えます
しかし、各フォントが持つ印象を評価したデータと照らし合わせると強い相関が出ている部分があることが分かりました。

また、文章そのものの内容にも迫るため、コメント全体のポジティブなコメントの割合と、ネガティブなコメントの割合も調査しました。
ここでは「COTOHA API」という文章解析APIを活用しました

結果、ネガティブ、ポジティブの割合だけではあまり大きな違いは見られませんでした。

以上の通り、フォントの印象が文章入力量と相関していることから、何かしらの影響を与えているとは考えられるものの、それがどういったものであるかはわからないというのが現状です。そこを含め、より調査を進めていくことが本研究の今後の課題となります。また、それを踏まえて、適切なフォントを適用することによる「炎上」防止ができればと思います。

 

文献情報

水野 颯, 中村 聡史. 入力フォームでのフォント変容による「炎上」抑制手法の提案と検証, 情報処理学会 研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN), Vol.2020-GN-110, No.10, pp.1-7, 2020.

発表スライド

最後に

これが私にとって大学卒業前の最初で最後の研究会発表となりました。

それがよもやオンライン形式になるとは思いもしませんでしたが、人見知りをする自分には逆に良かったのかもしれません。
ともあれ、発表をなんとか行うことができたのは、ご指導くださった先生や、研究室の皆様のおかげです。ありがとうございました。
また、厳しい状況の中でも発表の場を下さった運営の皆様と、発表をお聞きくださった皆様に感謝申し上げます。

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