中村聡史研究室

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科: Human-Information Interaction / Lifelog / BADUI

学生30人に教員1人の研究室運営について(2017-2019)

      2019/02/07

2年前に学生18人、教員1人による研究室運営について書いたところ、結構な反響をいただきました。今年度は、さらにその人数が増えて学生31人(B3が8人、B4が6人、M1が5人、M2が12人)となり(ちなみに、プレ配属されておりプロジェクト研究に取組んでいるB2も含めると38人)、ようやく大学院の修了生を出すなど、少し状況が変わってきましたので、1:30による研究室運営について書いてみようと思います。

前回も書きましたが、是非とも他の研究室を運営されている方が少しでも運営の方法を公開してくれることを願って、そして研究室選びで悩む学生のために、当研究室の運営方法を書いています。13,600字と長いわりに、まだたった4年そこらの経験に基づくものですので興味のある方だけどうぞ。

まず前提として、研究室には現時点で学生31人に教員が私1人だけで、私が仕事に割くことが可能な時間が平日の9時~17時と限られています(息子が85万人に1人のCFC症候群という重い病気をかかえており夜中も夫婦交代でのケアが必要で、娘もまだ5歳で手がかかるうえ、実家が長崎&沖縄と遠い)。そのため、できるだけ学生同士で助け合い、成長してもらう必要があります。また、あまり人気のない研究室で(他が人気すぎる!)第1志望でない学生さんも結構やってくるため、そうした学生さんたちでもモチベーションを保ちつつ研究室に参加してもらう必要があります。

そのうえで、私の研究室運営ポリシーは「突出した個・才能を見出し、飛躍的に伸ばす」ではなく、「ひとりの落ちこぼれも出さずにある程度高いレベルまで上げる」としています。つまり、世界の一線で戦う研究者を育てることよりは、研究の過程で色々な知識・方法論(独自に問題を設定して、解決に取組む)を学び、新しいことに取り組み、経験することによって、その力を就職してから役立てるだけでなく、就職先が大変な時に転職して生きていけるだけの力を身につけてもらうことを重視しています。やや後ろ向きに見えるかもしれませんが、世界の一線で戦う研究者はその本人の力だけでなく、まわり、そして社会のサポートが重要なものだと考えています。つまり、そうした人のすごさを理解し、積極的にそうしたひとをサポートできる人材を世の中にたくさん輩出できると、世の中は良い方向に向かうと考えており、そのための人材として育てることを目指しているともいえます。ちなみに、だからといって留年する学生を出さないことに成功しているわけではなく(留年させないことが成功なのかという話ももちろんありますが)、一定数の留年生は出ています。

なお、研究の過程で学ぶことができる方法論などを修得するには、学部での研究では数をこなすことができず不十分であり、ぜひ大学院に進学して数をこなし身につけていってもらいたいと思っているため、全員に博士前期課程(修士課程)への進学を推奨しています(今のところ1~3期生で85%の学生さんが進学しているので、慶応早稲田を除く私立大学の研究室では高い方だと思います)。一方で、博士後期課程への進学を積極的にすすめてはおらず、社会人ドクターでも悪くないのではと考えているため、希望するのであれば、他の研究室への進学もしっかり検討したうえで判断してもらうという立場にいます。

さて、先述の通り私の時間的な制約もあって、研究室全体としてのゼミは1週間に1回で2コマ分(200分)、修士以上のゼミは1週間に1コマ分(100分)を2回だけで、あとは週に1回の個人またはグループでのミーティングだけとなっています。どうしても出張や教授会などがあるとそれにも参加できなくなるので、その場合は学生にお任せになってしまいます。その限られた時間で、学生同士で助け合いをしつつ、ひとりも落ちこぼれずある程度のレベルまで成長するために、下記のような工夫をしています(長いですし、前回と重複が結構あります)。ちなみに、他人のサポートに時間を割く必要があるため、どうしても学生自身が自分の研究に向けることができる時間は減ってしまうことになります。

  • 学生部屋に常駐: 学生部屋に常駐するように心がけ、学生に見られては困る仕事以外は学生部屋でしています。最初は学生が嫌がるのかなと思っていましたが、気にしていたのは最初だけでした。学生が来ているかどうかを把握しやすいですし、学生に声をかけやすい・学生が声をかけやすいというメリットがあります。また、あまりにひどい状況になると、ストップをかけることができるというメリットもあります。これは筑波大学の森嶋研究室のやり方をまねさせていただいています。
  • 学部3年生には研究テーマを与え、3年生で1回は対外発表する: 個人的には、若い学生さんが研究において一番苦戦するのはアイディア出しをして研究テーマを考えることだと思っています。すぐに思いつくようなアイディアは当然のようにやられていることが多く、考えては却下され、考えては却下されを繰り返していくうちに時間がたち、挫折して研究嫌い!研究面白くない!となっているのをよく見ます。そこで、まずは研究における成功体験(学会発表)を得てもらうことを目的として、3年生にはこれまでの研究を引き継ぐ形で研究に取り組んでもらい、実装や実験、原稿執筆や学会発表をしてもらうっています。そして、そのやり方を踏まえて4年生からは独自にアイディア出しをして、研究してもらうようにしています。今のところ、このやり方で1期生、2期生、3期生、4期生の31人全員が発表できていますし、1期生12人については就職活動を始める前に研究と学会発表の面白さを感じたためか、全員が大学院進学することに、2期生も6人中4人が、3期生も卒業予定の学生のうち4人中3人が大学院に進学することになりました。また、学生さんが卒業したらその研究は終わりというのをよく見てきたのですが、この方法によりある程度継続性のある研究ができるかなと思っています。これはお茶の水女子大学の伊藤研究室のニーズとシーズに分けるやり方を改良して真似させていただいています。
  • 1年に1回はどこかで発表する: 人間やっぱり締め切りがないと動かないものですし、特に私は締め切りがないと何も進まない人間でした。なので、中村研では3年だけでなく、それ以降も1年に1回はどこかで発表する事を義務付けています。発表に向けて準備をすることは大変ですが、そうしたことを繰り返すと成長しますし、就職活動をするときや、修士論文を書くとき、最後に業績を整理するときに、あれ?自分って思った以上に頑張ってない?となるようです。
  • 修士の学生は国際会議か論文誌採録を目指す: 最初は研究会でよいと個人的には考えてるのですが、国際会議や論文誌は、修士に入ったら必ず挑戦してもらっています(本当は両方に挑戦してもらいたいところですが)。1期生は12人中4人が論文誌に採録され、7人が国際会議で発表しており、1人は国際会議に投稿し、1人は現在準備しており、目標は達成できそうです。これは、少なくとも英語かちゃんとした論文に挑戦するという投稿は修士号を取るためのノルマとなっています。
  • 4~5月は徹底的に個人ミーティング: 研究を始動して軌道に乗せるためには、まずは他者を交えず対面で十分なコミュニケーションをとることが重要だと考えています。特に4~5月の研究始動期においては、いつの間にか迷走してとんでもないところに向かっており、軌道修正をするのに難儀することが多いように思います。そのため、この時期は個人ミーティングをやっていくことによりテーマ固めをやっており(スケジュールで後述しますが、5月末に研究テーマを確定する合宿をします)、今のところ効果的であるように思います。なお、とあるアメリカの研究室ではボスが毎日、全員に対して数分のミーティングをやるのだそうです。これはかなり効果的だと思うのですが、時間的制約、学生数、東京の交通事情などから無理かなぁと思っています。
  • 6月~は先輩が積極的にサポートするピラミッド型: 基本的に3年生は先輩の研究テーマを引き継ぐことになるので、もともとその研究をやっていた学生さん(または、関連するテーマの学生さん)がサポートに入り、積極的に相談に乗るようにお願いしています。1~2年目とは違い、先輩が積極的に下の学生さんの面倒を見てくれることによって、随分研究のスピードがあがっていますし(3年生の時点で査読付きで発表できるなど)、私も楽をすることができ、他に労力を割くことができるようになってきています。先輩たちも、自身のテーマの引継ぎなので自信をもってサポートできており、今のところは廻っているように思います。ということで、研究室の運営スタイルとしてはフラット型ではなく、ピラミッド型になります。
  • 発表したらウェブで報告の義務: 国内の学会で発表するだけでは、その場に来ている人くらいしか見てくれません。もちろん、原稿が検索対象になって読んでもらえるかもしれませんが、一般の人にはなかなか見てもらえることはないと思います。そこで、学会参加のための旅費や宿泊費、参加費などを出すかわりに、記名で発表内容を記事として発信することを義務化しています。また、発表スライドなどもSlideShareを利用して公開するようにしています。もちろん、これでもたいして読んでもらえることはないかもしれませんが、少なくともその学生さんが就職活動するときには役に立つ履歴書になってると思っており、学生さんの名前でチェックさせてもらっていますと話をいただいたこともあります(タグ検索で一覧化できるため)。また、これが共同研究の種になってまして、これまでにこの記事をもとに3件問い合わせいただいており、2件が共同研究に発展しています。なお、スライドを公開しておくと他の研究室での論文紹介などで利用してもらいやすいというメリットもあるようです。
  • 研究室の成果のオープンアクセス化: FMS学科の1期生の宮代理弘君の研究テーマである研究室論文データベースに関する研究に感化され、中村研究室でも研究室論文データベースを整備することにしました。学生さんたちの働きによりデータとしてはほとんど整備完了していますが、まだHTTPS化してないのと、微調整が必要なので正式な公開はもう少しですが、近々公開できるかと思います。ちなみにα版はこちらで運用中
  • 他研究室との積極的な交流会の実施: どうしても研究室で閉じこもって研究をしていると、仲間が限られてしまい世界が広がりません。また、研究室内ではあまり評価されないことも、分野の違う人に見てもらうと高く評価されるということもあります。さらに、学生にとって研究成果は1回発表したらそこで終わりということが多いですが、せっかく頑張った成果ですので、是非ともいろいろな場で発表し、フィードバックを得てもらいたいという思いもあります。なんといっても、結果を残している研究室の多くは、積極的に他研究室との合同研究会を実施して、そこで伸びているという印象でした。そこで、積極的に合同の研究会を実施させていただくとともに、夜は懇親会で交流してもらうことにしています。これにより、学生同士友人関係が広がったり、研究テーマに広がりが出たりしているようで、かなりの効果があるようです。
  • リアルタイムの議事録共同編集: 論文紹介や学会参加中の議事録、進捗報告や発表練習などのコメントなどは個で完結してしまいがちで、記録が残らないことも多いものです。そこで、そうした議事録などをScrapbox上でリアルタイムに共同編集することにより、記録として残していっています(以前はGoogle Docsを使っていたのですが、トラブル頻出したため断念してしまいました)。ここでは、事前にある程度のフォーマットを用意して、概要を書くところと、質問・コメントを書くところと場を分けて、担当書記が概要を書き、それ以外の人は自由に書いています。その場でわからないところを質問しあったり、優しい人が補足するだけでなく、画像を貼り付けることもできるうえ、ネタ的投稿もできるということもあって、結構盛り上がります。ちなみに議事録の共同編集は、早稲田大学の森島研究室の議事録の残し方から着想を得ています。
  • 短時間での論文紹介: 論文紹介は重要だし、いい論文が紹介されると議論も盛り上がってよいのですが、そうでないことも多く、論文紹介ってなぜかグダグダになって内職をする人が増えるイメージがあります。なので、1件当たり5分で発表、5分で質疑を徹底させて、1回の論文紹介で数をこなすことを目指しています(現在は約30人いるので、3週に1回担当になる)。修士は英語の論文のみ、B4は論文誌または英語のものという条件を入れています。B3については慣れてもらうというのも重要ですのでしばりはありません。個人的には色々な分野の論文が出てくるのでかなり面白いです。ちなみに、論文紹介を短時間でやるというのは、明治大学の宮下研究室のやり方(こちらは3分で毎週担当がまわってきます)を真似させていただいています。落合さんの論文整理用のフォーマットはよくできているので真似したいと考えたときもあったのですが、断念してしまいました。いつか挑戦してみたいところです。
  • 短時間でのペアリーディング: ペア読書という方法をWebの記事で見かけて、これは論文読みでも使えるかもと思って、学部ゼミ(40分x2コマ)で春学期の間に実施していました。やり方は、まずこちらで論文(日本語は論文誌のもの、英語は国際会議の短いもの)を印刷しておき、ペアリングをして論文を最初の20~25分は各自で集中して読み、残りの15~20分程度で論文についてペアでディスカッションを行うというものです。論文紹介などでちゃんと読み切った後にこれイマイチ面白くなかったけどもう時間がないのでこれ紹介しますという事故が多かったので、できるだけポイントを絞って読み、ちゃんと読むべき論文かどうかを判断する事、そして論文に対する恐怖心を減らすためにやってました。最後に教員としての解釈を入れることができると良いのですが、時間的になかったのでそのままになっています。100分をちゃんと確保できるなら、そこまでやると良さげな気がします。
  • ローテーションでの1対1ペアプレゼン: 短い時間で自身の研究テーマを語ること、そして洗練するためにその回数をこなすこと。さらに聞いている側も気を抜かず遠慮なく質問・議論を吹っ掛けることができるようにすることを目的として、学生さんたちをペアにして、発表3分・質疑2分(場合によっては発表5分・質疑5分)を攻守入れ替えながら、ローテーションでぐるぐる回していくというのをやっています。結構盛り上がりますし、学生さんたちからも評判が良いように思います。このやり方、合同研究会でも有効で、一度関西大学の松下研究室との合同研究会ではこの形式のプレゼン大会をやって色々把握できました。ちなみに、全員が他者の研究を把握すること、また学年を越えてコミュニケーションを取れるようにすることも裏目的だったりします(これまでの経験で、卒業までほぼ喋ったことのない先輩や後輩っていましたし...)。
  • Google Calendarでスケジュール調整: なるべく自主的に動いてほしい(というか、調整はやってられない)という思いも込めて、Google Calendarでスケジュールを公開し、そのあいた隙間にミーティングを入れていってもらっています。4月~5月は特に個人ミーティングが山のように入るため、講義や学内用務、出張の合間を縫うように予定がどんどん入ってきます。基本的には問題ないのですが、予定を入れることを忘れないようにと繰り返しに予定として学生さんが登録した場合に、実際にはやるつもりがないのに登録されていて、実際にはミーティングがなく...ということもあったので、繰り返しの予定登録はなしにした方がよさそうだというのが知見です。
  • メールコミュニケーションの排除: メールで破たんするのは目に見えていたので、Slackで研究室内のコミュニケーションをとっています(当初はChatwork)。とはいえ、こちらも十分にはうまくいっているとは言い難いのが現状で、学生さんと連絡がつかなくなったときに、他の学生さんにLINEで連絡を取ってもらうなどしています。また、色々な意思決定をbotなど運用することで工夫したりしています。ちなみに、Slackの研究教育用アカウント(なんと85%オフ!)は、Slackに英語版の就業証明書を送ると取得できます。
  • 写真や動画はGoogle Photosのブランドアカウントで共有: Google Photosのブランドアカウントを使うと、閉じた多人数で写真を共有することができるので良い感じです。ちなみに顔画像で分類されているので、そこに少しずつ外部の方の名前を書いているのですが、学会に参加したときに参考になるようです。
  • Botの積極的な運用: 論文紹介の担当者や、順番、ペアリング、座長といったようなものをいちいち考えるのは面倒ですし、こういうのにかける時間は本当に無駄だと感じています。そこで、こうした担当割り当て、順番割り当て、グループ化といった作業については、全部Botに任せ、コマンドを入力するだけで自動決定させるようにしています。色々と始めるときには、これでかなり時間を短縮できています。
  • 研究用のノートPCは貸与: 研究を推進するうえで重要なのは環境になります。そこで、ノートPCについてはできるだけ新しい高性能なものを用意し、貸与するようにしています。これについては、予算があるうちは良いのですが、なくなったらどうするかというのは悩ましい問題です。共同研究費をもっともっと稼がなきゃ...。
  • 研究ノートの事前作成と同時編集: これまで所属していたところの毎週の進捗報告といえば、スライドを作ってプレゼンして伝えるというのが一般的でした。ただ、スライドを作るのは手間が多いものでそれにばっかり時間をかける人がいましたし、またスライドやプレゼンが悪いがために、研究内容(進捗状況)が悪く評価されてしまうというというのもよく見てきました。なので、基本的には報告内容はGoogle Docsで文書形式でまとめてきてもらい、それをベースに議論&次への課題は議事録にみんなで書き込むというスタイルを取っています。ちなみにこのやり方はうまくいってる人とうまくいっていない人がいるのが現状(やはり書き込むのはハードルがある?)で、まだまだ改善すべき点があるなというのが印象です。
  • テーマを固めるときにはPCを使わずホワイトボードで議論: スライドを使って説明したり、用意したドキュメントを使って説明したりということを最初の3年間やっていたのですが、どうも自身のテーマに対する理解が浅いと感じることがありました。そこで、現在はなるべく早い段階でPCを使わない議論をするようにしています。これをやることで、随分と研究が整理され、やるべきことも整理され、これまでよくあった1か月~2か月の迷走というのがなくなっている気がします。
  • ポスター・デモより口頭登壇発表を重視: 研究分野的には、動くものを作ってデモやポスターで展示して触ってもらい議論することが重要なのですが、どうも私の教育ではデモ・ポスターの練習を徹底させることができず、学生さんたちも何とかなると発表準備をさぼりがちになる傾向がありました。そこで、たとえレベルが多少低くても、デモ・ポスターではなくしっかり発表内容を作りこむことができる口頭の登壇発表を重視しており、基本的にみんな1年に1回は口頭の登壇発表をするように義務付けています。
  • 発表練習は徹底的に: 初めての学会発表の予定が入ると、1か月前くらいから(実際は3週間前くらいからになりつつありますが)、平日は毎日発表練習することを要求しています(発表者支援ツールは読んじゃって聴衆をみなくなるので禁止)。もちろん私がずっとは見れないので、同学年や同グループなどでみてもらいつつ、たまに見るというやり方をしています。これをやるとプレゼンの質が飛躍的に上がるのでよい感じです。また、デザイン警察などが登場したりして面白いです。ちなみに、これは大阪大学 旧西尾研究室(現、原研究室)の真似です(卒論の発表練習は、1か月前から毎日というのが決まりで、これでかなり鍛えてもらいました)。
  • 研究テーマ交換プレゼン: 特に若い学生さんたちは自分の研究において苦労した部分に思い入れが強すぎるのか、苦労した部分のアピールになってしまい、あまり良いプレゼンができないことが多いように思います。で、研究テーマを交換してプレゼンさせてみると、苦労した部分に対する思い入れがさっぱりないために、良いプレゼンができることが多いように思く、そこからの学びも多かったように感じました。これは時間的コストがかかるのでまだ頻繁にやれてはいないのですが、定期的にやりたいと思うイベントのひとつです。
  • 原稿は学生同士相互チェック: これはどこでもやってることだとは思いますが、原稿は学生同士に相互チェックしてもらうようにしています。ただ、いきなり文言レベルの修正をしてしまって時間がかかりすぎるとか、色々と問題も多く、うまいやり方はないかなと模索中です。また紙ベースでやるようにお願いしているのですが、時間的・空間的な制約でWordの校閲ツールを使うことが多く、あまり考えずに適用してしまって/あまり考えずに修正しまくってお互い勉強にならないということもあって悩ましく思っています。
  • 卒論・修論はページ数制限を設けずチェックシートによるチェックと査読: 卒論や修論は既定のページ数が決まっており、そこに向かって一生懸命ページを増やして何とか締め切りまでに達成するというのが私の周辺では一般的でした。ただ、このやり方は、図だけのページが出てきたり、1行だけのページが出てきたりとなんだかなぁと思うことが良くあり、また提出から発表までの時間がほとんどないため、書いてしまったものにあまり口出しができず、なんだかなぁと思うことが良くありました。ですので、まずはページ数制限をなくし、情報処理学会の論文誌フォーマットを改変して使って、書いてもらうようにしています(すぐにほかに投稿できるようにするため)。また、初稿の締め切りを12月下旬に設定し、査読を経て約3週間の修正期間を経て最終稿とし、卒論・修論発表会に臨むという方法をとっています。ちなみに、チェックシートが用意されており、他の人に2人以上チェックしてもらわないと、私に提出できないルールになっています。また、私以外にも学生にも匿名で査読に挑戦してもらい、それを著者に渡すようにしています。原稿チェックだとあまり大きな修正を出さないのですが、査読としてフォーマットを与えると、結構的確に大きな修正のための査読コメントを出してくれるように思います。なお、チェックシートについては、関西大学松下研究室で運用されているものを研究室用に変更して使わせていただいています。
  • 共同研究先には理解のあるところを選ぶ: 最初の数年間はまったく共同研究がなくてどうしたら良いものかと他の先生に相談したりしていたのですが、学生さんの活躍や、他からの紹介、研究室のサイトに発表記事を継続的に載せていたところそれを見て問い合わせてきてくれるところなどがあり、5件まで増えました。ただ、何でもかんでも受け入れているわけではなく、作るものが決まっている受託に近い案件や、期間が短いものはお断りさせていただいており、継続的に取り組め、研究は失敗して当然と思ってくれるところかどうかを見極めて契約をさせていただいています。企業さんへの理解を促すため、100万円/年で1人の学生を付けて研究します!と説明しています。実態は、主担当の学生のほかに、先輩後輩がからみつつ、副テーマとして研究していることが多いですが。
  • 共同研究・アドバイザ依頼以外の訪問はお断り: 特に東京に移ってからというもの、アクセスが良いためかご挨拶をとか、お話を聞かせてくださいと言われる機会はとても多く、結構頑張って準備をしたりするのですが、そういうもので共同研究やアドバイザ契約に繋がったことが1度もありません。そのため、学生などとの時間を確保するためにも、メールで問い合わせいただいたときには、まずこの可能性を伺い、可能性がない場合はお断りさせていただいています。これのおかげでずいぶん時間を確保できるようになりました。色々と断ってすみません。
  • お仕事にはアルバイト代を支払う: 研究室の学生さんを無料で使える労働者ととらえている研究室は少なからずあるように思いますし、研究室を運営することになる前に、色々な場面で学生さん達からそうした不満を聞くことがありました。そこで、教員側からお願いするお仕事については、基本的にアルバイト代として時給を支払うようにしています。また、主たる研究プロジェクトでない開発案件についてもアルバイト代を支払っています。まぁ、アルバイト代を払っているからこそ仕事としてお願いしやすいというのもあります。そんなこんなで外部からいただいている予算は、学生さんの出張旅費と人件費でほとんど溶けてしまってます。
  • 研究室の雑務の役割分担: サーバ管理や備品管理、教育係や掃除、レクなど色々と役割分担することによって回してもらおうと思ってたんですが、掃除やレク以外はあまりうまく回っていない印象です。まぁ、なかなか難しいですよね。とにかく備品と図書の管理が厄介な問題で、システム化してもらっているのですが、まだまだうまくいっていない印象です(新年度こそ!)
  • オンオフを明確に: 普通のひとにとって、集中して作業できる時間というのは限りがあると思っています。また、よほど研究が好きでない限り、オフの時間がないとだんだん研究自体がいやになってしまうように思います。ですので、研究に注力する時間と、そうでない時間を明確にし、平日はちゃんと寝て、日曜日はしっかり休むということを推奨しています。とはいえ、なかなか難しいらしく、締め切り直前はぎりぎりまでみんな作業をしていますし、日祝をつぶしてしまうこともちょくちょくあるようです(その分、平日が犠牲になってたりするようですが...)。
  • 最後尾を徹底的にケア: ひとは低きに流れていくもので、やらない人がでてくると、そっちにみんな少しずつ引きずられていきます。そこで、進んでいない人・やっていない人を見つけては、やるよう促したり、たまには怒ったりといった役目に専念しています。あと、研究が行き詰っているひとを探しては、なるべく話しかけるようにしています。とはいえ、完全に成功しているわけではなく、留年してしまう学生をどうしても出してしまっています。
  • ご家族(スポンサー)への成果の送付と報告: 学生によって色々だとは思いますが、私立大学に進学している学生さんは特に親御さんの金銭的な支援に頼っていることが多いと思います。その一方で、大学生ともなると日々の生活で親御さんと接する時間も少なくなり、三者面談もないし、いったい大学で何をやってるんだろう?と不安に思う親御さんも多いように思います。そのため、少しでも学生さんたちの頑張りに目を通してもらい、お金を出して大学に行かせてよかったと思ってもらうためにも、学生さんが卒業研究や修士論文を書き上げると,その卒業論文・修士論文に業績一覧、それぞれの対応する論文やポスターをつけたものを冊子にし(こちらの作業自体は学生さん自身にしてもらってています)、親御さんに一筆添えてお送りさせていただいています。親御さんとの信頼関係を築くことにもつながりますし、むしろ感謝されすぎなくらいに好評な気がします。

とまぁこんな感じでした。このやり方の成果なのかどうかはわかりませんし、単純に親ばかなだけかもしれませんが、学生さんたちはとても成長していますし、楽しそうに(もちろん結果が出ずに辛そうにしているときもありますが)研究しているように思います。まだ書き忘れがいろいろとあるようにも思いますので、また来年か再来年にでも、更新した最新版を投稿するかもしれません。

ちなみに中村研の1期生が3年生で研究室に配属され、修士を修了するまでのスケジュール(2015~2019年のもの)は下記のような感じです(どうしても学生数が増えて発表も多くなり、日程の調整が難しくなっているためか、合同研究会を年に2~3回しか実施できていないのが...)。

さて、最後にこのような感じで色々やっている理由ですが、これまで私が所属した研究室では、基本的に進捗報告会、論文紹介、グループミーティング、有志の輪講、遊びとして夏旅行・スキー旅行、たまに飲み会があるだけで、あまりこれといった研究室内での活動はありませんでした。まぁ、先生たちは忙しいので、進捗報告会での発表や徹底した質疑が教育であり、学会発表していくことによって、どんどん力がついていくという考え方だったんだと思います。実際この方法で一線で活躍する研究者が排出されてはいるのですが、このやり方で落ちこぼれていく人をこれまで何度も見てきました。もちろん、義務教育ではないので落ちこぼれていくのは仕方がないことかもしれませんが、ただ運が悪かったがために落ちこぼれてしまったり、新しいテーマ立案&取り組んで進捗報告会でぼこぼこにされて、それで軽くへこんでまた新しいテーマ立案&取り組んで発表してぼっこぼこにされるなどしたりして、次第にやる気をなくしていき、そのまま研究が嫌いになるというのを見ていて、もやもやすることが多々ありました。また、修士課程(博士前期課程)がなんとなく博士後期課程への選抜の場になっており、研究に向いていたひとが進学するのが博士後期課程で、向いていないひとは就職するというのにも引っかかりがありました。修士課程で研究すること自身に意味はあるだろうと。

そんなこんなで、自分で研究室を運営できる立場になったらそうした点を何とかしたいと考えており、明治大学に着任した1年目はまだ学部1年生しかおらず、所属するFMS学科は3年生から正式配属(そこからは配属変更はなし)ということもあって、正式配属までの2年間色々な研究室を調べさせていただき&教えていただき、正式配属されてからの2年間色々と試し、さらにその後に2年間試行錯誤してみたのが上のような内容です。どうしてもこういったやり方なのもあって、全体的にやる気に満ち溢れた研究室というよりは、全体的に意識低めだけど、周りの雰囲気と、開催地への興味と、〆切プレッシャーでやることは最低限積み上げつつ、お互い意見しあってグループで色々なことを楽しみつつ、なんとなく伸びていく研究室なんだろなと思います。

まぁ、教員当たりの学生数がもっと少ない研究室では参考にならないと思いますが、うちみたいな私立大学での研究室運営には少しは参考になる部分があるのかなと思います。また、配属希望を検討する学生さんたちにも多少参考になるのではと思います。

以上、私がなんとかやっている、いかに教員が頼りなくても学生同士で協力しあい、ひとりの落ちこぼれも出さずに成長してもらうための研究室運営でした。こういう風にするともっと良いよとか、こういうのはやるべきではないよなどありましたら、是非とも学会などでお会いした時にアドバイスいただけると幸いです。また、(どうしてもブラックと噂されがちな)中村研がどんなところなのかが、少しでも学生さんたちに伝わると幸いです。

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