第211回HCI研究会で「デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が算数問題の理解に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました(津田紗宮良)

投稿者: | 2025年2月1日

はじめに

はじめまして!中村研究室B3の津田紗宮良です!

2025年1月14~15日に沖縄産業支援センターで開催された第211回HCI研究会にて研究発表を行いましたので、ご報告させていただきます。今回は、「デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が算数問題の理解に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました。

研究概要

背景と目的

デジタルデバイスの普及によって、教育現場においてもデジタルデバイスを用いた学習が行われるようになっています。その中では、タイピングだけでなくデバイス上に手書きで文字を書く場面もあるでしょう。しかし、コスト削減のために、筆圧検知機能が搭載されているデジタルデバイスが採用されないことがあります。

そこで我々は、筆圧表現が無い場合は学習上の悪影響があるのではないかと考えて検証を行い、先行研究では筆圧による濃淡表現が無い場合、正答率が低下する可能性が示唆されました。それを踏まえて本研究では、学習における理解への影響について調査するために実験を実施しました。

実験

実験は、筆圧表現がある群(筆圧あり条件)と筆圧表現がない群(筆圧なし条件)の2群に分けて行いました。

また、実験内で新たに解法を理解・学習してもらうために、大学生であっても初見であれば解法を学ぶ必要のあるタスクとして中学受験用の算数の図形問題を採用しました。中学受験用の問題は、算数が出題範囲であり高度な知識は必要ありませんが、ひらめきが必要であったり、解法パターンを知っていたりしなければ解けない問題が多く存在します。そのため本実験では、解法パターンを知っている必要のある問題をタスクとして用いることにしました。

実際に実験で使用した問題の一部を以下に示します。今回は、円が通った面積や多角形が移動した際の点の軌跡を求めてもらうような問題を使用しました。

実験の流れとしては、まず、上記の2題についての解説動画を視聴しながらメモを取ることで解法を学習してもらい、次に、類題を4題解いてもらったうえで、どのように解いたのか実験参加者自身に口頭で説明してもらうことによって、解法を理解しているかの調査を行いました。

結果と考察

実験の結果、筆圧あり条件筆圧なし条件で解答時間に差はなかった一方で、正答率や説明の正確性では筆圧あり条件の方が高い傾向があることが分かりました。(左図:正答率 右図:説明の正確性があった人の割合)

以上の結果から、筆圧による濃淡表現の有無は理解に影響を与える可能性が考えられます。

この他にも、アンケートの結果や筆圧についても分析を行いましたので、詳細につきましては以下のスライドや論文をご参照ください。

いただいた質問

  • 自分が書く時の濃淡が影響するのか、解説で他人が書く時の濃淡が影響するのか?
    • 本実験で使用した解説動画では、濃淡表現を強調して書くことはしていなかったため、自身で書いた際の濃淡が影響している可能性があるのではないかと思います。ただ、板書の書き方を真似してメモを取ることもあると考えられるため、その点に着目した検証が必要であると考えています。
  • 濃淡表現がいいのか、それとも色を変えることによって書く内容の重要度を分けるのがいいのか?
    • 本研究では、筆圧による濃淡表現の有無について検証を行っていたため、色分けとの検証は行えていませんが、今後色分けとの比較を行うことによって、視認性への影響など調査を行いたいと考えています。

発表スライド

書誌情報

津田 紗宮良, 宮崎 勇輝, 小林 沙利, 中村 聡史, 掛 晃幸. デジタルペンの筆圧による濃淡表現の有無が算数問題の理解に及ぼす影響の調査, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2025-HCI-211, No.28, pp.1-8, 2025.

おわりに

初めての学会発表だったため、とても緊張していましたが、先輩方のサポートのおかげで無事に終えることができました。学外の方から貴重なご意見をいただき、さらに沖縄料理も楽しむことができ、非常に充実した時間を過ごすことができました。今回の学会での経験を、来年度以降にも活かしていきたいと思います。

最後になりますが、実験準備や論文執筆、発表練習に至るまでご指導いただいた先輩方、中村先生に心から感謝申し上げます。ありがとうございました!

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