第211回HCI研究会で「英文選択肢の長さが発話選択による選択に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(村上楓夏)

投稿者: | 2025年1月27日

はじめに

はじめまして!中村研B3の村上楓夏です.

2025年1月14~15日に沖縄産業支援センターで開催された第211回HCI研究会にて研究発表を行なってきましたので、ご報告させていただきます。今回は「英文選択肢の長さが発話選択による選択に及ぼす影響」というタイトルで発表させていただきました.

研究概要

背景・仮説

人は多くのタスクを抱えており,それをこなしていく必要があります.その際に取り組むタスクを他者から指定されるよりも,自ら「これに取り組もう!」と決めた方が,タスクのパフォーマンスが良いことが知られています.(親や先生から「勉強しなさい!!」と言われてからやるよりも,自分からやり始めた方が集中できた,という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?)

しかし,取り組むタスクを自身で決める場合,好みなどの問題から選択されるタスクに偏りが生じる可能性があります.本研究では,選択が偏る原因として提示する選択肢の長さに着目し「発話選択において選択肢が長いほど選択率が低くなる」という仮説をたてて実験を行いました.発話選択とは「選択したい内容を声で読み上げて選択する」という選択手法のことで,先行研究の結果をもとにこの仮説をたてました.また,先行研究では日本語を対象とした調査を行なっていたため,本研究では英語を採用し,他言語における選択肢の長さが選択に与える影響を調査しました.

 

実験

実験ではポインティングタスクを採用しました.これは下のアニメーションのように表示された円形のターゲットを必要回数クリックするというものです.このタスクに関して

  • 円を速くクリック
  • 円を正確にクリック
  • 円を同じリズムでクリック
  • 円の中心をクリック
  • 円周上をクリック

という5種類のタスク内容を用意しました.

提示する選択肢は,この5種類のタスク内容と下記の3種類の長さのテンプレートを組み合わせたものです.

  • short: as possible.
  • medium: as I can manage.
  • long: as is feasible to the greatest extent possible.

これらのフレーズはどれも「最大限に努力する」という意味となっています.

↑クリック選択画面(選択肢をクリックすることで選択可能)

 

↑発話選択画面(選択肢はクリックできず,内容を読み上げることで選択可能)

 実験協力者をクリック選択群と発話選択群にわけ(14名ずつ計28名),選択画面で3つの選択肢から1つを選び,そのタスク内容にしたがってポインティングタスクを行なってもらうという流れを1人につき20セット行いました.実験協力者は留学生や海外への長期留学経験者など,一定以上の英語力がある人を対象としています.

 

結果

こちらのグラフは選択肢の長さごとの選択率を示したものです.この結果からどちらの選択手法でも,長い選択肢(long)の選択率が最も低いことがわかります.また,発話選択の方が選択率の偏りが大きく,二項検定より発話選択のshortの選択率が48.6%となる確率,longの選択率が17.5%となる確率が5%未満となることから,この二つの選択率が特異(期待値通りでない)ことが分かりました.

こちらのグラフは,実験後に行ったアンケートで選択肢の選択基準について,「速くクリックするタスクを多く選んだ」と回答した実験協力者のデータを分析したもので,「速くクリック」というタスクがそれぞれの長さで提示された時の選択率を示しています.これを見ると全て同じタスク内容であるにも関わらず,特に発話選択で選択肢が長いほど選択率が低くなることがわかりました.

 

他にもタスク内容との関係や,アンケートの他の回答からの分析も行いましたので,詳細については下のスライドや論文情報をご参照ください.

 

発表スライド

 

 

いただいた質問

  • クリック選択と発話選択では何をやっているんですか?
    • それぞれ選択手法が違います.クリック選択ではどの選択肢でも単にクリックするのみですが,発話選択では長い選択肢を読み上げるのが面倒なので,短い選択肢へと誘導が可能ではないかと考えました.
  • 例えばleft, center, rightという風に発話選択でも選択肢の内容を読み上げない場合,どのような結果が得られると思いますか?
    • 今回の実験は選択肢の長さに注目したものですが,left, center, rightでは長さがほとんど同じなので,本研究のような長さによる誘導は難しいと考えられます.ただ,関連研究より「ディスプレイの中央に提示された選択肢が選ばれやすい」という結果が報告されているので,centerの選択率が高くなる可能性があります.

 

論文情報
村上 楓夏, 重松 龍之介, 大石 琉翔, 中川 由貴, 中村 聡史, 柴﨑 礼士郎, 鳥居 武史. 英文選択肢の長さが発話選択による選択に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2025-HCI-211, No.11, pp.1-8, 2025.

 

 

おわりに

今回が初めての学会発表だったため不安なこともありましたが,先輩方がたくさんサポートしてくださったおかげで無事に終えることができました!沖縄は美味しい食べ物がたくさんあって,1月とは思えないほど暖かくてとても楽しかったです!!天候が悪かったので無理でしたが、次は海にも入りたいです!

最後になりますが,実験準備から論文,発表練習などでたくさんのアドバイスをくださった先輩方,中村先生に心から感謝申し上げます.本当にありがとうございました!

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