中村聡史研究室

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科: Human-Information Interaction / Lifelog / BADUI

SIGHCI181で「周辺視野への視覚刺激提示によるプログレスバーの主観的な待機時間短縮手法」について発表してきました(松井啓司)

   

こんにちは、今年はジャスミン茶にハマっています。中村研究室M2の松井です。ストレス軽減、二日酔い対策など大学生に必須(?)となる様々な効果が期待できるジャスミン茶。中村研の公式飲料になる日も近いだろうなと確信しています。

さて、2019年1月に石垣島で開催されたSIGHCI181において、タイトルにもあるとおり「周辺視野への視覚刺激提示によるプログレスバーの主観的な待機時間短縮手法」という研究内容で参加し、登壇発表もしてきました。今回はその内容について簡単に報告をさせていただきます。

発表の様子

この研究に関連する過去の報告記事

今回の発表内容は学部生時代から続けてきた、体感時間短縮手法に関する研究において、自分にとっての最後のピースになるものとなっています。そのため私の過去の発表内容(SIGHCI176)を合わせてご覧いただくとより全体像がつかみやすくなるかと思います。良ければご一読ください。

 

発表内容

人の体感時間は様々な要因によって変化します。身近な例で言えば、PCを使っている際にページの読み込みなどで待ち時間が発生することでプログレスバーが表示されますが、これは処理にかかる残り時間を抽象的に表示することで、待ち時間を短く体感させる効果を持っています。他にも年齢や体調など、多くの要因が体感時間に関連していることが過去の研究から明らかになっています。

プログレスバー

このように体感時間を変化させる要因は多数存在しますが、私はその中でも「充実時程錯覚」という錯覚現象に着目し、この現象をプログレスバーと組み合わせることで、プログレスバーがもつ体感時間短縮効果をより強めることができるのではないかと考えました。これまでにもいくつかの実験を行ない、人間の周辺視野を活用することで充実時程錯覚の効果を無意識的に得られる(充実時程錯覚を別のものと組み合わせても問題がない)こと、およそ10秒程度(8秒から12秒)の待ち時間に対してプログレスバーと充実時程錯覚の組み合わせが有効であることなどを明らかにしてきました。

しかし、PCを使っている際に発生する待ち時間というのは本来非常に幅広く、10秒程度の待ち時間のみを対象とした実験だけでは、プログレスバーと充実時程錯覚の組み合わせが有効であることを示すには不十分でした。そこで、実験の対象を「10秒程度」から「2秒から12秒に」拡張したうえで再実験を行った、というのが今回の発表内容です。12秒以上の長い待ち時間については、プログレスバーをそもそも見ず、別のタスクに時間を使うことが多いという意見があったため今回は考慮していません。あくまでも「他のタスクをするには短いが、ただ待つだけだとすると長く感じる程度の待ち時間」を対象としています。

実験では中心視野へプログレスバーを、周辺視野へ視覚刺激を提示することで提案手法の効果を検証しています。視覚刺激の速度については5つの速度条件から2つを組み合わせることで速度の変化を発生させています。これは、これまで行ってきた実験において、一定速度での提示より速度に変化を持たせたほうが体感時間に影響があることを明らかにしていたためです。実験で用いた映像の例は以下のリンクからご覧いただくことが可能です。

このような映像をランダムに生成し、視覚刺激の提示速度を「加速大」「加速小」「一定」「減速小」「減速大(上の映像例がこれに該当します)」にそれぞれ分類して効果の比較を行いました。「大」や「小」については様々なパターンが存在していたため、今回はそれぞれの中央値より大きいか小さいかで分類を行っています。実験結果として、速度変化が小さい時に加速・減速に関わらず体感時間が強く短縮する傾向が見られました。

また、提案手法をWebブラウザで使用して体感時間を短縮させた際にどのような変化が見られるのかを調べるため、ページを閲覧しようとするたびに待ち時間が生じるシステムを構築し、下記の4つの手法について比較する実験を行いました。

  • 待ち時間に何も表示しない(空白のページが表示される)
  • 待ち時間にプログレスバーが表示される
  • 待ち時間に周辺視野に対する移動刺激が提示される
  • 待ち時間にプログレスバーと周辺視野に対する移動刺激が提示される(提案手法)

実験の結果は、下の表のような感じなのですが、ざっと説明すると提案手法を用いることで「ブラウザバック率が減少する」「吐き気などの影響はごく軽微である」ことが新たに明らかになりました。

ブラウザバック率が下がった理由としては、体感時間が短くなったことで長い待ち時間であっても待てるようになったということが考えられます。プログレスバー単体を提示した際との発生率の差は1.5(%)で、一見すると提案手法の効果があまりないように思えますが、周辺視野へシンプルな視覚刺激を提示しただけでこの差が発生しているため、もっと有効な視覚刺激についての調査や、体感時間に影響する他の要因の採用など、今後の検討次第ではより大きな体感時間短縮効果が見込めると考えています。

ちなみに、待ち時間(秒)ごとの離脱率は下記のような感じになっています。プログレスバーだけだと8~9秒待てないひともいるのですが、両方提示された場合には全員が8~9秒待つことができているということがわかりました。

このあたりについてはこの研究を引き継いでくれる後輩がいたら任せたいと思います。

吐き気などの生理指標についての表は、4点満点のアンケートを集計したものになっています。いずれの値も両方提示(提案手法)の項目で最も高い値となっていますが、その差はごく小さいものであるため、提案手法を用いた際に発生する悪影響はほとんどないと考えてよいと思います。提案手法が有効となる輝度値などの条件について詳細な実験を行うことで、この小さな差も解消することが可能だと思いますが、これについても後輩に任せたいと思います。

発表資料

投稿した論文および発表に用いたスライドは下記のリンクからご覧いただけます。

なお、今回の記事を作成するにあたり、研究発表終了後に分析を行ったデータについて記述している箇所があるため、記事と論文・スライドで一部内容が異なる箇所がございます。あらかじめご了承ください。

松井 啓司, 中村 聡史, 鈴木 智絵, 山中 祥太: 周辺視野への視覚刺激提示によるプログレスバーの主観的な待機時間短縮手法, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2019-HCI-181 (25), 1-6 (2019-01-14), 2188-8760  (2019/01/22).

発表を終えて

修論提出の時期と重なっていたため、これまでほど発表練習に時間と労力を割けなかったのが個人的に引っかかっています。普段ならしないような言い回しのミスが多く、嫌な汗が止まらなかったのがいまだに忘れられません。同期の新納もこの学会に参加していましたが、彼も発表中に今までになく悲しい表情をしていたので、基本的に修論の時期に学会に参加するとこうなるんだろうなって思いました。これを見た後輩たちは時期を変えるか死ぬ気で練習するかしてくださいね…。

また、個人的な話ですが学部生時代からこの学会にばかり参加してきました。理由は開催場所が沖縄本島もしくは石垣島だったからです。本当にいいですよね沖縄。何度来ても楽しめると思います。

そういう意味でもとても思い入れのある学会で学生最後の発表ができたのは幸運でした。SIGHCIの運営および参加者の皆さま、本当にお世話になりました。そして数年振りに会った学生を弟と呼んでくれた優しいお兄ちゃんにも、ありがとうございました。またどこかで!

いろいろ含めての感想

この研究会に参加したのが1月の下旬。そこからほとんど間を空けず、2月1日にはすぐ修論発表会がありました。

何かを終えたらほとんど息抜きをする暇もなく、すぐ次の準備が始まる。中村研に入ってからの4年間は、振り返ってみるとずっとそんなことの繰り返しだったように思います。

そういう意味では「何かに追われてないと頑張れないと思うから」という後ろ向きな理由で中村研を志望した僕にとって願ったり叶ったりな環境でした。追われている間はずっとストレスしかなくてジャスミン茶をがぶ飲みしてましたけれどね。がんばって得たものとストレスで失ったものの割合はなんとなく同じくらいの重さな気がしますので、僕個人の意見として、中村研に入ったことについて後悔は一切ありません。辛いことも多かったけれど、とても楽しい4年間でした。

そういう場を作り上げてくれた中村先生をはじめ、僕の好きな中村研の雰囲気を守り続けてくれたみんなのおかげで、本当に本当に楽しかったです。ありがとうございました。

さて、長くなってしまいましたが誰が次の発表報告記事で自分語りをしてくれるのか楽しみにしながら終わりたいと思います!

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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