HCS2019にて「自身のみ聴取可能な音楽によるプレゼンテーション支援手法の提案」というタイトルで登壇発表してきました(徳久弘樹)

      2023/01/05

ハイサイ。

中村研究室M2の徳久弘樹です。度重なる沖縄への遠征で心はすっかり島人(しまんちゅ)になりました。今ならトゥバラーマもデンサー節も言葉の意味がわかりそうです。

さて今回は、2019年5月16日~17日に沖縄県那覇市の沖縄産業支援センターにて行われたヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)2019に自分とB3の濱野、伊藤、杉本、梶田、築舘(現小林研)、川島(現渡邊研)とその共著者含め計12名の大所帯で参加してきましたので、その発表報告記事となります。

発表内容

発表タイトルは「自身のみが聴取可能な音楽によるプレゼンテーション支援手法の提案」で、1月に石垣島の第106回GN研究会で発表したものの続きになります。今回も音楽を聴きながら発表を行っています。

この研究のそもそもの問題意識は、どれだけ練習していてもひとまえでプレゼンするときに緊張してしまってだめプレゼンになってしまうというものです。前回までの研究では、SonyのXperia Ear Duoといった遮音性の無いイヤフォンを用いてプレゼン中の発表者に音楽を聴かせることで、緊張を緩和できることを明らかにしてきました。そこでのフィードバックより、発表中に音楽を聴くことは緊張を緩和できるだけでなく、声の大きさや発話の間の沈黙の長さなどに影響を与え、発表の質という点にも関与してくることが示唆されました。

そこで本研究では、プレゼン中に音楽を聴くことで、緊張を緩和させるだけでなく、発表における声の抑揚や大小といったものを改善して、より良いプレゼンをするための支援手法を提案し、その有用性について実験で調査しました。

実験は以下の2つを行いました。

  • 発表者の声の音声分析による評価実験
  • その発表を聴いた聴講者による客観評価実験

1つ目の評価実験では、15分のプレゼンを音楽を聴きながらの場合と聴かない場合でそれぞれ1回ずつ行ってもらい、その様子を撮影した映像から抽出した音声で比較と分析を行いました。ここでは「良いプレゼン」の評価指標として「声が大きいこと」、「声に抑揚があること」、「発話に適度な間があること」の3点とし、声の大きさと発話の間の2点に関しては音楽を聴いた時に理想的な値に近づいており、提案手法の有効性が示唆されました。また、今回の実験の音楽には発表時間と同じ長さである15分ちょうどのクラシック音楽「ボレロ」を採用しており、その影響から音楽を聴いた時にはプレゼンの発表時間と実際のプレゼンにかかった時間の差が、音楽を聴かなかった時より有意に少なくなり、プレゼンの時間が守られやすくなることが明らかになりました。

2つ目の客観評価実験では、1つ目の実験で得られた映像データを別の実験協力者に視聴してもらい、音楽を聴いたプレゼンと聴いていないプレゼンについてそれぞれの印象をアンケートで比較してもらいました。その結果、アンケートで尋ねたプレゼンの聞き取りやすさ、話のスピード、話の滑らかさを始めとするすべての評価指標に差はありませんでした。これより、音楽を聴いた発表者の声が大きくなったり、発表時間を守ろうとして焦るといったことに対して違和感が生じるといった客観的な悪影響はないということが示唆されました。

今後は様々な音楽ジャンルによるプレゼン支援を検討し、プレゼンの内容やシチュエーションに沿ったプレイリスト作成手法の実現を目指していきます。

 

文献情報

発表スライドは下記のとおりです。

 

また、下記のデジタルライブラリより原稿のPDFにアクセス可能です。

徳久 弘樹,大野 直紀,中村 聡史.自身のみが聴取可能な音楽によるプレゼンテーション支援手法の提案, 電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), HCS-9,Vol.119,No.38,pp.45-50,2019

 

感想

早くも院生になって3度目の発表を迎えることができました。これも日々サポートしてくださる先生や研究室のメンバーと、圧倒的モチベーションを与えてくれる沖縄という土地のおかげです。ちょうど学会が行われている5月16日に沖縄の梅雨入りが発表されましたが、幸い天気は崩れず、1月の石垣島に引き続きまたしても空き時間で沖縄の綺麗な景色を満喫できました。やっぱり沖縄は最高です。

今回は自分以外の発表者が全員学会初参加のB3だったのですが、みんなそれを感じさせないほどプレゼンや質疑応答のレベルが高く正直びびりました。自分がB3だったころのことを思い出すと頭が痛くなります。今回の遠征は沖縄の土地から日々の活力をもらえただけでなく、優秀な後輩の台頭というそんな一面でも多くの刺激を受けた旅となりました。自分の学生生活も残り1年を切ったので、少しでも多くの成果を出せるように頑張っていきたいと思います。それではまた。

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