中村聡史研究室

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科: Human-Information Interaction / Lifelog / BADUI

DEIM2019で「続巻への動機付けのためのコミック読書進度に応じたシーンのデータセット構築と自動推薦に関する検討」という研究発表を行いました(佐藤剣太)

      2019/04/23

春,引っ越しの季節がやってきました.

いやー引っ越しって大変ですね,色々と.

家具の運び込みとか整理とか買い足しとか無限にやってますし,何よりも住民票を移動しなければならなかったのが個人的に一番心苦しかったですかね.何たって,行政的にとはいえ,埼玉県民の肩書きを捨てなければならないんですから.これでも結構な地元愛はあるほうだと思っているので,苦渋の決断に踏み切ったというわけです.

生まれ育った場所のことを強く心に留める意味でも『翔んで埼玉』は今度暇な日に見に行こうと思っています.

というわけで皆さんどうも,この春から神奈川県民になった中村研M2の佐藤剣太です!
このたび,3月4日〜6日にかけてホテルオークラJRハウステンボスにて開催された第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019)にて中村研究室生活最後の研究発表をしてきましたので,その報告をさせていただきます.

今回発表した内容は,第31回人工知能学会全国大会(JSAI2018)での発表成果からさらに進めたものとなっています.

 

前回までのおさらい

本研究では,「漫画の無料公開部分を読んだものの,購入に踏み切っていない読者」や「購入して読んでいたものの,途中で止めてしまっている読者」に再び続きから読んでもらうことを目標として,ユーザの読書量に応じて最も適切な広告を自動で決定することを目指しています.

まず,「読書状態は続きを読むモチベーションに影響を与えるのか?」を検証したところ,漫画を途中まで読んだ読者については,未読のシーンを提示されるとモチベーションを高く上げられることが明らかになりました.

この内容は, 第47回エンタテインメントコンピューティング研究会にて発表した内容となります.

 

さらに,この実験で推薦されたページを定性的に分析したところ,

  • 1〜2ページ分にわたる大きなサイズのコマを持つ
  • セリフや会話の量が前後のページと比較して著しく減少する

といった特徴を持つことが明らかになりました.

この内容は, 第32回人口知能学会全国大会(JSAI2018)のコミック工学セッションにて発表した内容となります.

 

今回の内容

2つの異なる読書状態に対して漫画のページを推薦した場合,その間には異なる特徴がみられるのではないか?と考え,データセット構築を行いました.

ここでの推薦対象というのは「(現在の推薦者から見て)前の巻まで読んだ読者」「作品を読んだことのない読者」の2パターンです.

今回は4ジャンルから1作品ずつ10人の実験協力者に,それぞれ第1巻をまず読んでもらいます.その後,第2巻を読んでもらい,「第1巻まで読んだ読者」に推薦するページ,「作品を読んだことのない読者」に推薦するページを,第2巻内の各ページに対して推薦度を付与してもらっております.その後,第3巻を読んでもらい,「第2巻まで読んだ読者」に推薦するページ「作品を読んだことのない読者」に推薦するページを,第3巻内の各ページに対して推薦度を付与してもらっております.

なお,推薦度としては下記の値を付与してもらいました.

  • あまり読みたくなるとは思わないページには0
  • やや読みたくなると思うページには1
  • とても読みたくなると思うページには2

なお,前の巻まで読んだ読者のものと,作品を読んだことのない読者のものは,別日に実施することで影響をなくしています.

 

構築結果

10人の実験協力者に付与してもらった推薦度の平均値を,ページの若い順に並べたグラフが以下のようなものとなります.

ここでは一例として,バトル漫画(『アド・アストラ -スキピオとハンニバル-』)の第2巻の構築結果のみ掲載します.

ページ番号と平均推薦度の分布を表したグラフ(アド・アストラ 第2巻)

グラフの平均値が高いページほど多くの人が「おすすめだよ!」と思ったページということになります.
「作品を前の巻まで読んだ読者」に対してのページは青色のグラフ,
「作品を読んだ経験のない読者」に対してのページは橙色のグラフで表現しています.

このうち,片方のグラフのみにおいて,ページの平均値が1.0を超えた箇所に着目して定性的にページ内容を分析しました.
その結果,以下のようなページが多く選出される傾向にありました.

ジャンルと読書状態ごとの推薦ページの傾向

 

このことから,想定した2パターンの読者のモチベーションを上げるためには,イラスト/文章のどちらを強調すれば良いかは,読書状態だけでなく,ジャンルによっても異なる可能性が示唆されました.

このデータセット構築で得られた知見は,その漫画を読んだことのない人,Webの試し読みで最初だけ読んだ人というように,読書の経験量が異なる様々な人に対して,動的にWeb広告を変更して提示することが可能になると期待しています.

発表に使用したスライドは以下よりご覧いただけます.

 

書誌情報

佐藤剣太,牧良樹,中村聡史: 続巻への動機付けのためのコミック読書進度に応じたシーンのデータセット構築と自動推薦に関する検討,第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019),G3-4,pp. 1-7.

 

いただいた質疑

Q1. 読んだコミックをどれだけ面白いと思ったのか?読んだ後のアンケート結果などとっていれば教えてほしい

A1. 今回の実験ではとっていない.協力者の感じた面白さと構築内容には関係があるかもしれないので,とる意味はあると思う.

 

Q2. 1を超えてるページが,1巻あたり5ページに収まっているのは興味深い.データセット構築の際に何か制約はつけたのか?

A2. 制約はつけていないが,例えば上位3ページを選んでもらってる中で,4番目に選ばれたものが排除されるのはデータセット構築として適切でないと判断したため,この閾値に設定した.

 

感想

質疑で思うように答えられなかったことは反省事項です...しかし,練習はいつも通りしっかり積み重ねた結果,安定して話すことができたかと思います!!

発表の様子

 

冒頭でも少し触れましたが,これが僕にとって最後の研究発表となりました.修論の執筆と並行して作業しなければならない時期もあり,中村研での4年間の研究活動は最後の最後まで多忙だったなあ...笑という印象です

ですが,周りの仲間には恵まれました!これは僕が成長するにあたって一番大きかったです.特にスライドの作り込みとプレゼンのスキルは自分でもかなり伸びたと実感していますが,それも含めて僕が大きく成長できたのは中村先生や中村研のみんなの助けがあってのことです.

幾度となく研究が迷走したり,心労が重なり1ヶ月ほど研究できなくなる時期もあったりしましたが,今振り返ればそれも経験.周りと助け合いながら乗り越えることを学べたからこそ,今の僕があるのだと思います.

中村先生,中村研のみんな,今まで学会や研究会で僕の発表を聞きにきてくださった皆様,本当にありがとうございました!中村研での日々の活動で得られたものを社会人生活でも活かしていけるよう,今後とも精進いたします!!

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