ICEC 2026で“Toward Post-Game Reflection in In-Person Collectible Card Games: Match Reconstruction Using Chest-Mounted Cameras”を発表しました(新嶌道大)

投稿者: | 2026年10月14日

はじめに

こんにちは,中村研究室M1の新嶌道大です.

2026年10月6日から9日にかけてフランス・パリで開催された国際会議ICEC 2026(25th IFIP TC 14 International Conference on Entertainment Computing)にて,“Toward Post-Game Reflection in In-Person Collectible Card Games: Match Reconstruction Using Chest-Mounted Cameras”というタイトルで発表しましたので,ご報告します.

 

研究概要

背景

トレーディングカードゲーム(TCG,英語ではCollectible Card Game:CCG)では,対戦後にプレイヤ同士で試合を振り返る「感想戦」が行われます.感想戦では,「なぜこのカードを使ったのか」「別の行動を選ぶことはできなかったか」といったことを話し合います.自分の判断を見直したり,相手の考えを知ったりできるため,プレイの上達につながる重要な機会です.

しかし,対面で行うTCGの試合を,記憶だけで正確に振り返ることは簡単ではありません.例えばチェスでは,盤上にあるすべての駒を両方のプレイヤが確認できます.一方でTCGでは,「手札」は本人にしか見えません.そのため,対戦後に手札を思い出せなければ,「その場面でどのような選択肢を持っていたのか」を本人も対戦相手も確認できません.デジタル版のカードゲームであればシステム上に対戦記録を残せますが,紙のカードを使った対面での試合では自動的な記録は残りません.そこで本研究では,普段の対戦方法を大きく変えずに,ポケモンカードゲームの手札と盤面の両方を記録する方法を検討しました.

胸部に装着したスマートフォンによる対戦記録の取得

本研究では,両方のプレイヤがスマートフォンを胸部に装着し,そのカメラで対戦を撮影します.一般的な上方からのカメラでは,テーブル上のカードは撮影できても,プレイヤ側に向けて持っている手札までは確認できません.一方,胸部から撮影すると,プレイヤが手札を確認したときのカードと,テーブル上の盤面を同じカメラで記録できます.

胸部カメラ

 

撮影した映像に対して,画像の中からカードの位置と種類を見つける物体検出のモデルの1つであるYOLOv8を適用しました.手札を検出するモデルと盤面を検出するモデルをそれぞれ用意し,複数のフレームにまたがる検出結果を組み合わせます.

そこから,次のような変化を推定しました.

  • 手札に新しいカードが加わった
  • 手札からカードが使われた
  • 盤面にポケモンが置かれた
  • ポケモンが入れ替わった
  • エネルギーカードが付けられた

最後に,推定した変化を時系列に並べることで,対戦の流れを確認できる「対戦譜面(対戦ログ)」を生成します.

カードと対戦イベントの再現精度

提案手法を評価するため,ポケモンカードゲームを対象として15試合を撮影しました.筆頭著者と5名の協力者がそれぞれ3試合ずつ対戦し,すべての試合で両方のプレイヤが胸部にスマートフォンを装着しました.まず,映像から抽出した500フレームを用いて,カードをどの程度正しく検出できるかを調べました.その結果,検出の正しさと見落としの少なさをまとめて評価するF1値は,手札で0.91,盤面で0.85となりました.F1値は1に近いほど精度が高いことを表しており,胸部カメラから手札と盤面のカードを比較的高い精度で検出できることがわかりました.

一方で,カードの変化から対戦中の出来事を再現することは,カードを見つけることよりも難しいという結果になりました.例えば,手札にカードが加わった出来事のF1値は,著者の映像では0.70,協力者の映像では0.47でした.また,手札からカードが使われた出来事では,それぞれ0.66と0.35でした.

カードが映像から見えなくなった場合,実際に使用されたのか,手や別のカードで一時的に隠れただけなのかを映像のみから判断することが難しいためです.また,カメラの角度や姿勢,胸部カメラへの慣れによっても撮影映像に差が生じました.

対戦譜面を用いた感想戦

次に,生成した対戦譜面が感想戦でどのように使われるかを調べるため,3組のプレイヤを対象とした探索的な観察を行いました.各組には2試合を行ってもらい,一方の試合では記憶だけを頼りに感想戦を行い,もう一方では生成した対戦譜面を見ながら感想戦を行ってもらいました.

対戦譜面を用いた感想戦では,記憶だけの場合には「別の動きができたかもしれない」と抽象的に終わっていた議論が,その場面の手札を確認することで,「このカードを先に使い,その後に別のカードを出すこともできた」といった,実際のカードと手順に基づく代替案へと具体化しました.また,対戦中には確認できなかった相手の手札も対戦後に見られるため,「この手札を持っていたから,この行動を選んだのではないか」「なぜこのカードを使わず,別の行動を選んだのか」など,相手の判断理由について検討する会話も生まれました.さらに,ある局面を確認したことをきっかけに,そのカードが手札に加わった以前の場面や,そのときの選択が影響した後の場面までたどりながら,対戦全体の流れを振り返る様子も見られました.

考察と今後の展望

今回の結果から,胸部に装着したスマートフォンという比較的簡単な撮影方法でも,対面TCGの手札と盤面を記録し,感想戦の手がかりとなる対戦譜面を生成できる可能性が示されました.今後は,安定して撮影できるカメラ位置の検討や,カードが撮影範囲から外れた際に知らせる仕組みなどによって,対戦譜面の精度を向上させる予定です.また,対象となるプレイヤやデッキ,対戦環境を増やし,より多様な条件で検証する必要があります.

さらに,音声記録やインタビュー,感想戦中の会話分析と組み合わせることで,対戦譜面がどのような議論を促すのか,その議論がプレイヤの上達につながるのかを明らかにしていきたいと考えています.

 

発表スライド

論文情報

Michihiro Niijima, Satoshi Nakamura. Toward Post-Game Reflection in In-Person Collectible Card Games: Match Reconstruction Using Chest-Mounted Cameras, International Conference on Entertainment Computing(ICEC 2026)

中村研究室論文レポジトリ

 

おわりに

今回が人生で初めての海外渡航だったため,出発前からめっちゃワクワクしていました.先輩と共にパリのさまざまな観光地を巡ることができて、自分の世界が広がりました.なかでも夜のエッフェル塔が一番の思い出です.ライトアップされたエッフェル塔とパリの夜景は,写真で見るよりも美しく,特にエッフェル塔最上階から見るパリの夜景は忘れられない思い出になりました.

一方,学会では自分の英語力不足を強く実感しました.英語で自分の研究を発表することに加え,他の研究者の発表を聞いて内容を理解することも難しかったです.今回の経験をきっかけに、英語の勉強のモチベーションがかなり上がったので,これから時間を見つけて英語の勉強をしていきたいです!

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