はじめに
こんにちは,中村研M2の重松龍之介です.
2026年9月3日〜4日に北九州学術研究都市で開催されたHCI219にて『デジタル時計における時刻の部分的な視覚的強調が短期記憶に及ぼす影響:年齢群による効果差の検証』というタイトルで発表を行ってきましたので,ご報告をさせていただきます.
今回発表した研究は2026年3月に芝浦工業大学で開催されたHCI217で発表した内容の再検証という位置付けをしております.あわせてご覧いただけますと幸いです.
研究概要
背景
人は日常生活の中で,移動や作業の区切りなどさまざまな場面で時計を確認しています.しかし,直前に時計を見ていたにもかかわらず,再び時間を確認してしまう経験は少なくありません.これは,時計を視認しても,その時刻が十分に記憶されていない可能性を示しています.
着眼点
デジタル時計の時間単位を部分的に大きく表示する手法:強調された部分に視線が誘導され,記憶に残りやすくなるのではないか?
過去の研究[HCI217]
表示条件は以下の3種類としました.
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通常表示:すべて同じフォントサイズ
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左要素強調:左側の要素を強調
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右要素強調:右側の要素を強調
実験概要
部分的な視覚的強調が,時刻情報の短期記憶に及ぼす影響を調査
3つの表示条件のうちランダムに1つを1秒間提示し,後になんと表示されていたかを回答してもらいました.
実験参加者:436名
結果
通常表示と強調表示の同じ時間単位の正答率を比較
時の正答率:2.2%上昇
分の正答率:2.8%上昇
正答率は数値上わずかに上昇したが,有意な差は確認されませんでした.
探索的結果
50歳未満群:強調対象の正答率が低下する傾向
50歳以上群:強調対象の正答率が向上する傾向
強調による正答率の変化が,年齢群によって異なる可能性が探索的に示されました.
目的
本研究では,過去の研究で見られた年齢群によって強調の効果が異なる傾向の再検証を行い,年齢に応じて強調表示を切り替える必要があるかを明らかにします.
実験
実験はスマートフォンのWebブラウザ上で実施しました.
参加者はクラウドソーシングを通じて募集し,最終的に1,312名のデータを分析対象としました.
実験では以下の手順を行いました.
参加者が意図的に情報を覚えないようにするため,刺激提示の前後には簡単な操作タスクを挿入しました.
参加者には3つの提示条件のうち1つが割り当てられ,提示と回答はそれぞれ1回ずつとしました.
結果
強調対象の正答率
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50歳未満群
- 時の正答率:4.4%上昇
- 分の正答率:2.1%低下
強調表示による一貫した変化・有意な正答率の向上は確認されなかった
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50歳以上群
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時の正答率:3.6%低下
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分の正答率:1.0%低下
-
強調表示による有意な正答率の向上は確認されなかった
本実験では,サイズによる強調表示によってその部分の正答率が有意に向上するという結果は得られませんでした.また,過去の研究で見られた年齢群差は再現されませんでした.
探索的結果
時と分それぞれの時間単位で,片方の桁のみ正解した回答について探索的に分析を行いました.
時の部分正解:72件
- 十の位のみ正解:34件
- 一の位のみ正解:38件
正解した位に有意な偏りなし
時の部分正解:91件
- 十の位のみ正解:64件
- 一の位のみ正解:27件
十の位のみ正解した回答が有意に多かった
分が不正解と判定された人の中で,十の位までは覚えられていた人が多かったという結果となりました.これは,「13:40くらい」と時刻を曖昧に覚えていることが多い可能性が考えられます.
発表スライド
論文情報
おわりに
今回の学会発表の舞台は福岡県北九州市でした.福岡県にはこれまで何度も訪れていますが,北九州を訪れるのは今回が初めてでした.
おいしい食事と美しい景色に触れ,「こんなにも素晴らしい場所があったのか」と,これまで訪れなかったことを少し後悔しました.同時に,これからもまだ知らない場所や魅力に出会えるのだという期待が膨らみました.
最後に,本研究を進めるにあたり多くの方にご協力をいただきました.この場を借りて感謝申し上げます.ありがとうございました.



