中村聡史研究室

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科: Human-Information Interaction / Lifelog / BADUI

SIGHCI177で「プライミング効果を用いた音楽の印象変容に関する基礎調査」というタイトルで発表してきました(阿部和樹)

   

中村研究室B4の阿部和樹です.

3月16日,17日に明治大学中野キャンパスで開催された第177回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(SIGHCI177)にて,「プライミング効果を用いた音楽の印象変容に関する基礎調査」というタイトルで研究発表をしましたので,その報告をさせていただきます.

あらまし

Spotifyなどの音楽配信サービスには,音楽推薦システム(レコメンド機能)が活用されており,ユーザが新しい音楽と出会える機会が増えつつあります.一方で,これらの推薦システムでは,ユーザが自力で発見可能なもの(有名な曲や既知のアーティストの曲)が推薦されるなど,システムに対するユーザの満足度を十分に考慮できていない問題があります.我々はこれらの問題に対し,推薦された個々の音楽に対して好感を抱く機会を増やすことで,推薦システムに対する満足度を向上させる方法を試みます.そこで,研究の第一ステップとして,音楽の感じ方,つまり印象を変化させる手法について検討することとしました.

研究の概要

今回の研究は,人の行動や思考を誘導する手法の一つであるプライミング効果を利用し,音楽に対してユーザが抱く印象を変化させるという試みになります.

プライミング効果とは,事前に提示される情報に無意識のうちに影響を受けて,その後の行動や思考が変化する現象です.有名な実験として,John Barghの「フロリダ効果実験」があります.この実験では,被験者に「しわ,はげ,忘れっぽい」などの老人を想起させる単語で作文をさせ,その後の歩行速度を計測しています.すると,被験者の歩行速度が通常より遅くなることが判明しました.つまり,老人を想起させる単語が,老人のような行動を引き起こしたことになります.このように,人の行動や思考の直前になにかしらの刺激を与えることで,無意識のうちに影響を与えることが可能であるとされています.

我々は,このプライミング効果を音楽鑑賞の場面に利用する方法を検討しました.具体的には,音楽鑑賞の直前にテキスト情報を提示し,その内容によって音楽の印象を操作することが可能ではないかと考えました.ここでは,うその情報を与えるのではなく,嘘のない正しい情報(かつ容易に取得できる情報)を提示することによってどうなるかを調査しています.プレ実験では,歌詞や再生数,最初の和音,再生速度を提示したのですが,音楽に素養のない実験協力者が多かったためか,あまり効果がありませんでした.そこで本実験では直前に提示する情報として,

  • 音楽の人気に関する情報
  • 音楽の雰囲気に関する情報
  • 音楽の歌詞に関する情報

の3つを検討し,それらを提示した場合と提示しなかった場合とを比較することで,音楽の印象がどのように変化するかを調査しました.18人に100曲を2回ずつ試してもらう実験の結果は下記のとおりです.

  • 音楽の人気が高いことを提示した場合,「明るさ」や「元気が出る」といったポジティブな印象が上昇し,音楽に対する好感度も上昇する.
  • 音楽の雰囲気を事前に提示すると,関連する印象に変化が起こる.今回は明るさ・激しさの雰囲気情報を提示し,それらによって明るさ・激しさに関連する印象を高めることが可能であることが明らかになった.

とはいえ,今回の結果は割と直接的な情報を提示してしまっているため,今後はもっと間接的な情報を提示して,無意識的にその効果が出るようなものを考えております.また,現段階ではプライミング効果によって与える影響が小さいため,より大きな変化を起こす方法についても検討していきます.さらに今後は本研究を応用し,音楽推薦の場面において,推薦された音楽の印象に影響を与えるシステムの実現を計画していきます

発表スライド

発表に使用したスライドがこちらになります.

また,論文は下記からアクセスできますので,興味のある方はどうぞ.

発表原稿

阿部 和樹, 大野 直紀, 土屋 駿貴, 前島 紘希, 中村 聡史: プライミング効果を用いた音楽の印象変容に関する基礎調査, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2018-HCI-177(13), pp.1-8 (2018-03-09) , 2188-8760..

感想

約1年ぶりの学会発表でしたが,ホームグラウンドでの発表ということもあり,あまり緊張せずに発表を終えることができました.また,発表後にも研究に関して様々なご意見をいただき,自分の研究の未熟な部分などいろんな気づきを得られました.発表を聞いてくださった方々,また発表の準備を手伝ってくれた仲間に深く感謝申し上げます.

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