はじめに
こんにちは,中村研究室修士2年の福井です.
11月4日から7日にインドネシアで開催されたCollabTech 2025(The 31st International Conference on Collaboration Technologies and Social Computing)にて発表してきたので,そちらについて報告させていただきます.
今回の発表は,CN121で発表した内容を再分析したうえで英語化したものになりますので,ご興味があればこちらもご覧ください.
CN121にて「即興型ディベートにおける大局的な反論構造の可視化に基づく議論の噛み合い度合いの基礎検討」というタイトルで発表してきました(福井雅弘)
研究概要
背景と目的
即興型競技ディベート(perliamentary debate)は,「タバコを禁止するべきか?」「死刑は廃止するべきか?」といったトピックに関して肯定側と否定側の2チームが討論を行い、説得力を競う競技です.これは主に高校の部活動や大学のサークルなどで行われており,単に勝ち負けを決めるだけではない,教育的な意義のある取り組みとして,世界中で盛んに行われています.
しかしながら,従来のディベートの評価に関する研究では勝敗判定に基づく手法がよく用いられており,教育的に重要な対話としてのディベートの質に関して十分に調査されていませんでした.そこで本研究では,反論の個々の内容ではなく,議論全体の反論構造に着目することで,建設的な議論の特徴を捉えるディベートの評価手法の構築を目的としました.
アプローチ
複雑な議論構造を分析するための一般的な手法として,議論マイニング(argument mining)があります[Stab 17].これは,発言と発言の間にあるサポートや反論などの関係性をグラフ構造として推定するタスクです.今回の研究では,この手法をベースとして反論構造を著者の手作業で解析し,後述の仮説を検証しました.
仮説と結果
反論構造の特性から議論の質を評価できるか検証するため,以下の4つの仮説を立てました.
- 2ターン以上前の発言への反論の割合は小さい方がよい
- 再々反論などの反論のラリーは多いほどよい
- 同じ発言に対し複数の反論が行われる場合,連続しているほうが良い
- 相手の発言とそれに対する反論の順番は揃っている方がよい
これらの仮説から反論構造のグラフの特徴量を定式化し,経験者とLLMの評価データを使って、leave-one-out交差検証で重回帰分析を実施しました.結果として,評価データと特徴量の間には中程度の正の相関が見られましたが,まだまだモデルに改善の余地があることもわかりました.今後さらにモデルの改善を進めていきたいと考えています.
おわりに
インドネシアを訪れたのはこれが初めてだったのですが,想像以上に日本車が多く走っており,ホテルの近くのモールにはユニクロやニトリがあり,ジメジメした気候も数ヶ月前の日本と似ていて,かなり親近感をおぼえました.しかし,日本ではあり得ない量のバイクの軍団や,エキゾチックな料理など,現地の文化も肌で感じることができました.
レストランはメニューがインドネシア語で書かれていることも多く,激辛メニューが出ないかヒヤヒヤしながら楽しみました.

ホテルから見たジャカルタの景色
ミーアヤム(鶏そぼろ麺)
最後になりますが,ご指導いただいた中村先生,引率していただいた小林先生,実験や論文執筆に協力していただいた皆様に改めて深く感謝申し上げます.本当にありがとうございました!
発表スライド
書誌情報
